下痢が1週間以上続いています。大丈夫ですか？

下痢が1週間以上続いていて、不安に感じている方も多いでしょう。通常の下痢は数日で治まるものですが、長引く場合には脱水症や栄養不良などのリスクがあり、背後に病気が隠れている可能性もあります。この記事では、1週間以上続く下痢の原因や対処法、医療機関を受診すべきタイミングについて詳しく解説します。

下痢が1週間以上続いている場合、自己判断での放置は危険です。急性下痢は通常2週間以内に治まりますが、それを超える場合は持続性下痢、さらに4週間以上続く場合は慢性下痢と分類されます。長引く下痢は、感染症や炎症性腸疾患、過敏性腸症候群などさまざまな原因が考えられるため、早めに医療機関で原因を特定することが重要です。

発症から2週間以内のものを指します。ほとんどの場合、ウイルス性胃腸炎や細菌性食中毒などが原因で、適切な水分補給と休養により自然に回復します。

この段階では体内の病原体を排出しようとする生理的反応として下痢が起こっているため、無理に止めるよりも脱水を防ぐ対策が優先されます。

2週間から4週間続く下痢を持続性下痢と呼びます。この段階では、単純な感染症以外の原因も疑われ始めます。寄生虫感染、抗生物質の副作用、薬剤性腸炎などが考えられます。

医療機関では便検査や血液検査などで原因を特定し、適切な治療方針を決定します。

発症から4週間以上続く下痢を慢性下痢と定義します。この場合、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、吸収不良症候群、内分泌疾患など、より複雑な病態が背景にある可能性が高まります。

慢性下痢では、詳細な検査により原因疾患を特定し、長期的な治療計画を立てる必要があります。

下痢の継続期間により、考えられる原因や必要な検査内容が異なります。1週間を超える下痢は、単なる感染症を超えた原因がある可能性を示唆しているため、医療機関での評価が推奨されます。

細菌性感染や寄生虫感染は、長引く下痢の代表的な原因です。カンピロバクター、サルモネラ、赤痢菌などの細菌や、ジアルジアやクリプトスポリジウムなどの寄生虫は、1週間以上の下痢を引き起こします。

特に海外渡航後の下痢では、寄生虫感染の可能性を考慮する必要があります。

潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患では、慢性的な下痢が主要な症状として現れます。これらの疾患では、腸の粘膜に炎症や潰瘍が形成され、血便や腹痛を伴うことが多くあります。

炎症性腸疾患は若年層にも発症し、長期的な管理が必要となる慢性疾患です。

過敏性腸症候群は、腸の器質的な異常がないにもかかわらず、腹痛と便通異常が慢性的に続く機能性消化管疾患です。下痢型の過敏性腸症候群では、軟便や水様便が頻繁に起こり、排便により症状が一時的に軽減する特徴があります。

ストレスや食事内容が症状を悪化させる要因となることが知られています。

抗生物質、抗がん剤、制酸剤などの薬剤は、副作用として下痢を引き起こすことがあります。特に抗生物質は腸内細菌のバランスを崩し、クロストリジウム・ディフィシル感染症を引き起こす可能性があります。

服用中の薬がある場合は、医師に相談して薬剤性下痢の可能性を評価することが重要です。

乳糖不耐症やセリアック病などの食物不耐症は、特定の食品成分を消化・吸収できないことで下痢を引き起こします。乳製品を摂取すると下痢になる場合は乳糖不耐症、小麦製品で症状が出る場合はセリアック病の可能性があります。

食事との関連を記録することで、原因特定の手がかりになります。

下痢による水分と電解質の喪失が続くと、脱水症状が進行します。強い渇き、めまい、尿量の減少、口の乾燥、皮膚の弾力性低下などが初期症状として現れます。

さらに進行すると、全身の脱力感、動作の鈍化、意識障害が出現し、重症の場合は循環不全や腎機能不全に至る危険性があります。

便に血液が混じる場合は、腸管の炎症や潰瘍、腫瘍などの可能性を示唆します。鮮血便は下部消化管からの出血を、黒色便は上部消化管からの出血を示すことが多く、いずれの場合も速やかな医療機関受診が必要です。

炎症性腸疾患や感染性腸炎、大腸がんなどの重大な疾患が隠れている可能性があります。

38.5度以上の発熱を伴う下痢は、重症の感染症を示唆します。細菌性腸炎や炎症性腸疾患の急性増悪では、高熱と下痢が同時に出現することがあります。

発熱は体が感染と戦っているサインですが、長引く場合は抗生物質などの治療が必要になります。

耐え難いほどの腹痛や、特定の部位に限局した強い痛みは、腸閉塞、虚血性腸炎、腸穿孔などの緊急性の高い病態を示す可能性があります。

痛みの程度が増している場合や、安静にしても改善しない場合は、すぐに医療機関を受診してください。

意図しない体重減少は、栄養吸収不良や慢性炎症の存在を示唆します。炎症性腸疾患、セリアック病、悪性腫瘍などでは、下痢による栄養喪失と疾患自体の影響により体重が減少します。

短期間での顕著な体重減少は、重大な疾患のサインとなる可能性があります。

これらの症状がある場合は、自己判断での対処を避け、速やかに医療機関を受診することが重要です。

医師はまず詳細な問診を行い、下痢の性状、頻度、随伴症状、食事内容、服用中の薬剤、渡航歴などを確認します。身体診察では、腹部の触診、腸音の聴取、脱水の評価などが行われます。

これらの情報から、必要な検査の方向性が決定されます。

便培養検査により、細菌や寄生虫の有無を確認します。また、便中の白血球や潜血反応を調べることで、炎症の程度を評価できます。

クロストリジウム・ディフィシル毒素の検査も、必要に応じて実施されます。

血液検査では、炎症マーカー、貧血の有無、電解質バランス、栄養状態などを評価します。炎症性腸疾患や感染症では、CRPや白血球数の上昇が見られます。

貧血は慢性的な出血や栄養吸収不良を示唆します。

大腸内視鏡検査により、腸管粘膜を直接観察し、炎症、潰瘍、ポリープ、腫瘍の有無を確認できます。必要に応じて組織を採取し、病理学的検査を行います。

炎症性腸疾患の診断には欠かせない検査です。

腹部CT検査やMRI検査により、腸管の状態や周囲臓器への影響を評価します。クローン病では、腸管壁の肥厚や瘻孔形成などの特徴的な所見が見られることがあります。

画像検査は、内視鏡では評価が難しい小腸の病変を検出するのにも有用です。

下痢による脱水を防ぐため、こまめな水分補給が重要です。水だけでなく、経口補水液を利用することで、失われた電解質も効果的に補充できます。

スポーツドリンクは電解質濃度が低いため、特に小児の脱水対策には経口補水液が推奨されます。

下痢の際は、腸に負担をかけない消化の良い食事を選びましょう。おかゆ、うどん、バナナ、りんごのすりおろしなどが適しています。

脂っこい食べ物、辛い食べ物、カフェイン、アルコールは腸を刺激するため避けるべきです。

体が回復するためには、十分な休養が必要です。無理をせず、体を休めることで免疫力が高まり、回復が促進されます。

睡眠不足やストレスは症状を悪化させる要因となるため、注意が必要です。

下痢の回数、性状、色、随伴症状、食事内容などを記録しておくと、医療機関受診時に診断の手がかりとなります。

症状と食事の関連性が見えてくることもあります。

市販の下痢止め薬は、感染性腸炎の場合に病原体の排出を妨げ、症状を悪化させる可能性があります。自己判断での使用は避け、医師や薬剤師に相談してから使用しましょう。

特に血便や発熱を伴う場合は、下痢止めの使用は禁忌です。

下痢が1週間以上続く場合は、単なる急性胃腸炎を超えた原因が隠れている可能性があります。脱水症状、血便、高熱、激しい腹痛、体重減少などの危険な症状がある場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。家庭では適切な水分補給と休養を心がけ、症状の記録をつけることで、医師の診断をサポートできます。長引く下痢を放置せず、早めの医療相談を検討しましょう。

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