下痢と便秘を繰り返すのは何か病気でしょうか?
2025.10.28
下痢と便秘が交互に起こることで困っている方は少なくありません。この症状は日常生活に大きな支障をきたすだけでなく、何か重大な病気のサインではないかと不安になることもあります。この記事では、下痢と便秘を繰り返す原因となる主な病気とその対処法について、医学的根拠に基づいて詳しく説明します。
下痢と便秘を繰り返す主な原因
下痢と便秘を繰り返す症状は、過敏性腸症候群(IBS)という機能性消化管疾患が最も一般的な原因です。IBSは腹痛や腹部不快感とともに排便習慣の変化が3ヶ月以上続く状態を指します。特に混合型IBS(IBS-M)では、硬い便と軟らかい便が交互に現れることが特徴的です。その他にも、ストレス、食生活の乱れ、腸内環境の変化などが関与している可能性があります。
過敏性腸症候群(IBS)の分類と症状
IBSは排便パターンによって以下の4つのタイプに分類されます。
| IBSのタイプ | 主な症状 | 便の特徴 |
|---|---|---|
| 便秘型(IBS-C) | 慢性的な便秘、腹部膨満感 | 硬便が25%以上 |
| 下痢型(IBS-D) | 頻繁な下痢、急な便意 | 軟便・水様便が25%以上 |
| 混合型(IBS-M) | 便秘と下痢が交互に発生 | 硬便と軟便がそれぞれ25%以上 |
| 分類不能型(IBS-U) | 症状が変動的 | 上記のいずれにも該当しない |
この表からわかるように、下痢と便秘を繰り返す症状は混合型IBSに該当します。混合型IBSの患者さんは、便秘型と下痢型両方の症状を経験し、排便時のいきみと排便の切迫感の両方を頻繁に報告しています。
混合型IBSに伴う症状
混合型IBSでは、排便の変化以外にも以下のような症状が現れることがあります。
- 腹痛や腹部けいれん
- 腹部膨満感やガスの増加
- 排便後の症状改善
- めまいや頭痛
- 不安感や睡眠障害
これらの症状は個人差が大きく、日によって症状の程度が変わることも特徴です。ストレスが高まる時期には症状が悪化する傾向があります。
過敏性腸症候群以外の可能性のある病気
下痢と便秘を繰り返す症状は、IBSが最も一般的な原因ですが、他の病気の可能性も考慮する必要があります。
炎症性腸疾患
クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患では、腸に慢性的な炎症が起こります。主な症状としては繰り返す下痢が最も一般的ですが、一部のケースでは便秘が認められることもあります。特に腹痛、血便、体重減少、発熱を伴う場合は、早期に医療機関を受診することが大切です。
甲状腺機能異常
甲状腺ホルモンは消化管の運動機能に影響を与えます。甲状腺機能亢進症では下痢が起こりやすく、甲状腺機能低下症では便秘が起こりやすくなります。両者が変動することで、排便パターンが不安定になることがあります。
食物不耐症
乳糖不耐症などの食物不耐症がある場合、特定の食品を摂取した後に腹痛や下痢が起こり、その後に便秘になることがあります。症状と食事内容の関連性を観察することが診断の手がかりとなります。
薬剤の副作用
抗生物質、制酸剤、鎮痛剤などの薬剤によって腸内環境が乱れ、下痢と便秘が交互に起こることがあります。新しい薬を飲み始めた後に症状が出現した場合は、医師に相談しましょう。
過敏性腸症候群の原因とメカニズム
IBSの正確な原因は完全には解明されていませんが、複数の要因が複雑に絡み合って症状が引き起こされると考えられています。
脳腸相互作用の異常
腸と脳は神経系とホルモンで密接につながっています。ストレスや不安を感じると、脳から腸へ信号が送られ、腸の運動機能や感覚が変化します。このような脳腸相互作用の異常がIBSの発症に関与していることが知られています。
内臓知覚過敏
IBS患者さんでは、腸が通常よりも敏感になっており、わずかな刺激でも痛みや不快感を感じやすくなっています。この内臓知覚過敏により、正常な腸の動きでも症状が現れることがあります。
腸内細菌叢の異常
腸内には数兆個の細菌が生息しており、消化や免疫機能に重要な役割を果たしています。IBS患者さんでは腸内細菌のバランスが乱れていることが研究で示されています。特に混合型IBSでは、便秘型や下痢型と比較して腸内細菌の多様性が変化していることが報告されています。
腸粘膜透過性の変化
混合型IBSでは、腸の粘膜バリア機能が低下し、本来体内に入らない物質が腸壁を通過しやすくなっています。この変化が腸の炎症反応を引き起こし、症状の原因となっている可能性が指摘されています。
感染後のIBS発症
胃腸炎などの感染症の後にIBSを発症することがあります。細菌やウイルス、寄生虫による感染が、長期的な腸の機能異常を引き起こすことがあると考えられています。
診断方法と医療機関を受診する目安
IBSの診断は主に症状に基づいて行われます。国際的に広く用いられているRome IV基準では、以下の条件を満たす場合にIBSと診断されます。
Rome IV診断基準
- 週に1回以上の腹痛が3ヶ月以上続いている
- 腹痛が以下の3項目のうち2項目以上と関連している
- 排便によって症状が改善する
- 排便の頻度が変化する
- 便の形状が変化する
診断にあたっては、他の器質的疾患を除外するために血液検査、便検査、腹部X線検査、大腸内視鏡検査などが行われることがあります。
早急に医療機関を受診すべき症状
以下のような症状がある場合は、IBSではなく他の重大な病気の可能性があるため、速やかに医療機関を受診してください。
- 血便や黒色便
- 原因不明の体重減少
- 持続する激しい腹痛
- 発熱を伴う症状
- 夜間に症状で目が覚める
- 50歳以上で初めて症状が出現した場合
- 大腸がんや炎症性腸疾患の家族歴がある場合
これらの症状は、炎症性腸疾患や大腸がんなどのより深刻な病気の可能性を示唆するため、詳しい検査が必要です。
治療と対処法
混合型IBSの治療は、症状の軽減と生活の質の向上を目標として、複合的なアプローチで行われます。
食事療法
食事はIBS症状に大きな影響を与えるため、食事療法が第一選択肢となることが多いです。
低FODMAP食は、発酵性の糖質を制限する食事法で、IBS症状の改善に効果があることが研究で示されています。高FODMAP食品には、小麦、豆類、一部の野菜や果物、乳製品などが含まれます。ただし、長期的な制限は栄養バランスに影響する可能性があるため、栄養士の指導のもとで実施することが推奨されます。
食物繊維は便秘の改善に役立ちますが、不溶性食物繊維を過剰に摂取すると下痢や腹部膨満感が悪化することがあります。水溶性食物繊維を中心に、適量を摂取することが大切です。
薬物療法
症状に応じて以下のような薬物療法が選択されます。
| 薬剤の種類 | 主な効果 | 使用される症状 |
|---|---|---|
| 抗コリン薬 | 腸の痙攣を抑える | 腹痛、腹部けいれん |
| 止瀉薬 | 下痢を抑える | 下痢優勢時 |
| 緩下剤 | 便を柔らかくする | 便秘優勢時 |
| プロバイオティクス | 腸内環境を整える | すべてのタイプ |
| 抗うつ薬(低用量) | 内臓知覚過敏を改善 | 慢性的な腹痛 |
混合型IBSでは、下痢と便秘が交互に現れるため、その時々の優勢な症状に応じて薬を使い分けることが重要です。プロバイオティクスは腸内細菌叢のバランスを整え、全般的な症状改善に役立つことが報告されています。
心理療法
IBSは心理的要因と深く関連しているため、心理療法が効果的であることが多くの研究で示されています。認知行動療法、リラクゼーション法、催眠療法などが症状の改善に役立つことがあります。
ストレス管理も重要で、十分な睡眠、適度な運動、趣味やリラックスできる時間を持つことが症状の軽減につながります。
生活習慣の改善
以下の生活習慣の改善もIBS症状の管理に役立ちます。
- 規則正しい食事時間を保つ
- 早食いを避け、よく噛んで食べる
- カフェインやアルコールの摂取を控える
- 適度な運動を習慣化する
- 十分な睡眠をとる
- ストレス管理を心がける
これらの対策を組み合わせることで、多くの患者さんで症状のコントロールが可能になります。
日常生活での注意点と予防策
混合型IBSと上手に付き合いながら日常生活を送るためのポイントをご紹介します。
症状日記をつける
食事内容、排便の状態、ストレスレベル、症状の程度などを記録することで、自分の症状パターンや悪化要因を把握できます。この情報は医療機関での診断や治療方針の決定にも役立ちます。
外出時の備え
急な便意に対応できるよう、外出先のトイレの場所を事前に確認しておくことや、必要に応じて薬を携帯することで、不安を軽減できます。
食事内容の工夫
一度に大量に食べると症状が悪化しやすいため、少量ずつ頻回に食事を摂るようにしましょう。また、症状を悪化させる食品を特定し、それらを避けることも効果的です。
適度な運動
ウォーキングやヨガなどの適度な運動は、腸の運動を正常化し、ストレス軽減にも役立ちます。激しい運動は逆効果になることもあるため、自分の体調に合わせて無理のない範囲で行いましょう。
十分な水分補給
特に下痢が続く時期には脱水に注意が必要です。こまめに水分を補給し、電解質バランスを保つことが大切です。
まとめ
下痢と便秘を繰り返す症状は、過敏性腸症候群の混合型(IBS-M)が最も一般的な原因です。IBSは腸と脳の相互作用の異常、内臓知覚過敏、腸内細菌叢の変化などが複合的に関与して発症します。診断は主に症状に基づいて行われ、血便、体重減少、激しい腹痛などの警告症状がある場合は、他の重大な病気を除外するための検査が必要です。治療は食事療法、薬物療法、心理療法、生活習慣の改善を組み合わせた多面的なアプローチが効果的とされています。症状の記録をつけ、自分の体調パターンを把握することで、症状のコントロールがしやすくなります。症状が続く場合や悪化する場合は、医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。
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出典
- 下痢 - Wikipedia
- 便秘 - Wikipedia
- 過敏性腸症候群 - Wikipedia
- Irritable bowel syndrome - MedlinePlus Medical Encyclopedia
- Irritable Bowel Syndrome | IBS - MedlinePlus
- Review Article: Current and future treatment approaches for IBS with diarrhoea (IBS-D) and IBS mixed pattern (IBS-M) - PubMed
- Irritable bowel syndrome - PubMed
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