便秘で便意を感じない時はどうすれば?
2025.10.30
便秘が続くと便意そのものを感じにくくなり、トイレに行くタイミングが分からなくなることがあります。この状態は直腸の感覚機能が低下している可能性があり、適切な対処が必要です。この記事では、便意を感じにくい便秘の原因と改善方法について、医学的根拠に基づいて詳しく解説します。
便意を感じない原因
直腸低感度(直腸鈍感)
便意を感じない主な原因は「直腸低感度」と呼ばれる状態です。研究によると、難治性の機能性便秘患者の約25%に直腸低感度が認められると報告されています。これは直腸が便で満たされても、通常よりも強い刺激がないと便意を感じられない状態を指します。
慢性便秘の女性を対象とした研究では、約50%の方が便意の認識に異常があることが分かっています。この場合、通常の直腸の感覚ではなく、腹部全体の不快感として便意を感じることが多いと報告されています。
便意を感じない時の対処法
規則的な排便習慣の確立
便意を感じにくい場合でも、毎日決まった時間にトイレに行く習慣をつけることが重要です。
| 推奨時間帯 | 理由 | 具体的な方法 |
|---|---|---|
| 朝食後 | 胃結腸反射が活発化 | 食後15~30分以内にトイレへ |
| 夕食後 | リラックスした状態 | ゆっくりと時間をかけて座る |
| 毎日同じ時刻 | 腸のリズム形成 | 便意がなくても5~10分座る |
研究によると、朝に排便訓練を行った患者の85%が1ヶ月以内に効果的な排便習慣を確立できたと報告されています。朝のスケジュールの方が夕方よりも早く効果が現れる傾向があります。
この表は、便意を感じにくい方が排便習慣を確立するための推奨時間帯と、その理由、具体的な実践方法を示しています。胃結腸反射を活用できる食後、特に朝食後が最も効果的とされています。
食事と水分摂取の改善
便意を促すためには、腸の動きを活発にする食事内容が大切です。
- 食物繊維の摂取: ベリー類、ブドウ、桃、アプリコット、プルーン、レーズンなどの果物
- 全粒穀物: 全粒パン、オートミール、玄米
- 野菜: 葉物野菜、豆類、根菜類
- 水分補給: 1日に8~10カップ(2~2.5リットル)の水分摂取
医療専門家によると、十分な水分摂取により便が腸を通過しやすくなり、間接的に便意を感じやすくなります。
運動と腹部マッサージ
定期的な運動は腸の蠕動運動を促進し、便意を感じやすくする効果があります。
- 推奨運動: 週3~4回の有酸素運動(ウォーキング、軽いジョギング、水泳など)
- 腹部マッサージ: 「腸もみ」などで物理的刺激を与える
- 骨盤底筋運動: ケーゲル運動で直腸周辺の筋肉を強化
排便再訓練プログラム
バイオフィードバック療法
バイオフィードバック療法は、便意を感じにくい慢性便秘の治療に有効な方法として医学的に認められています。
コクランレビュー(2014年)によると、以下のような効果が報告されています。
| 評価項目 | バイオフィードバック群 | 対照群 | 評価時期 |
|---|---|---|---|
| 便秘改善率 | 70% | 23%(偽治療) | 3ヶ月後 |
| 週あたりの自発的排便回数 | 4.6回 | 2.8回(偽治療) | 3ヶ月後 |
| 臨床的改善率 | 80% | 22%(下剤治療) | 6~12ヶ月後 |
バイオフィードバック療法では副作用の報告がなく、安全性の高い治療法として評価されています。
この表は、バイオフィードバック療法の効果を示す臨床研究の結果をまとめたものです。偽治療や従来の下剤治療と比較して、便秘の改善率や自発的な排便回数が大幅に向上していることが分かります。
感覚訓練
直腸の感覚機能を改善するための訓練方法があります。
- バルーン訓練: 医療機関で直腸内にバルーンを挿入し、少しずつ膨らませることで感覚閾値を改善
- 定期的なトイレ訓練: 便意がなくても決まった時間にトイレに座り、5~10分間リラックスする
- 肛門括約筋の刺激: 排便反射を促すための刺激療法
研究によると、ほとんどの患者は数週間以内に規則正しい排便パターンを確立できると報告されています。訓練の成功には、規則正しいパターンを保つことが非常に重要とされています。
医療的な治療選択肢
薬物療法
便意を感じない便秘に対して、いくつかの薬物療法が検討されます。
- 浸透圧性下剤: 便を柔らかくし、腸の動きを促進
- 刺激性下剤: 腸の蠕動運動を活発化
- プロカロプリド: 腸の運動を促進し、便意を感じやすくする薬剤
研究によると、プロカロプリド1mgの投与により、硬い便の割合が減少し、排便時のいきみが軽減され、便意を感じやすくなることが報告されています。
専門的な治療
保存的治療で改善しない場合、以下のような専門的治療が検討されます。
- 仙骨神経刺激療法: 難治性便秘に対する治療法で、研究では12名中11名が治療後に自発的な排便パターンを回復し、便意を感じるようになったと報告されています
- 電気刺激療法: 直腸の感覚機能が低下している患者に対して、14セッションの電気刺激療法後に便秘症状が劇的に改善した症例が報告されています
- 浣腸や坐薬: 便塊が形成されている場合の即効性のある治療
注意すべき症状
便意を感じない便秘でも、以下のような症状がある場合は速やかに医療機関を受診してください。
すぐに受診が必要な症状
- 3日以上全く排便がない
- 強い腹痛や腹部の膨満感
- 吐き気や嘔吐を伴う
- 便に血が混じっている
- 急に便秘になり、ガスも出ない
- 発熱を伴う便秘
- 体重減少が続いている
便塊(糞便塞栓)の可能性
長期間の便秘により、直腸内で便が硬く固まる「便塊」が形成されることがあります。この状態では以下のような症状が現れます。
- 腹部のけいれん痛
- 腹部の膨満感
- 直腸からの出血
- 便秘と水様性の下痢が交互に起こる
便塊は医療機関での処置が必要な状態です。浣腸や用手的除去が行われることがあります。治療により予後は良好とされていますが、適切な処置を受けないと直腸組織の損傷などの合併症が起こる可能性があります。
長期的な管理方法
生活習慣の継続的改善
便意を感じやすい体質を作るためには、以下の習慣を継続することが大切です。
- 規則正しい食事時間: 朝食を抜かず、3食を決まった時間に摂る
- 適度な運動習慣: 週3~4回、30分程度の有酸素運動
- ストレス管理: リラックスする時間を持ち、十分な睡眠を取る
- トイレ環境の整備: 落ち着いて排便できる環境を作る
薬剤の適切な使用
便秘薬を長期間使用する場合は、医療専門家の指導のもとで行うことが重要です。
- 刺激性下剤の長期連用は腸の機能をさらに低下させる可能性があります
- 浣腸の乱用は直腸肛門反射を減弱させ、便意をさらに感じにくくする原因となります
- 自己判断での薬剤使用を避け、定期的に医師と相談しましょう
定期的な経過観察
便意を感じない便秘の改善には時間がかかることがあります。
- 排便日誌をつけて、排便の頻度やパターンを記録する
- 改善が見られない場合は、治療方法の見直しを医師と相談する
- 新たな症状が現れた場合は速やかに報告する
まとめ
便意を感じない便秘は、直腸の感覚機能が低下している可能性があり、適切な対処が必要です。規則的な排便習慣の確立、食事と水分摂取の改善、運動習慣が基本的な対策となります。バイオフィードバック療法などの排便再訓練プログラムは、医学的に効果が認められた治療法です。改善が見られない場合や、強い症状がある場合は、医療機関での専門的な検査と治療が推奨されます。便意を感じにくい状態が続く場合は、自己判断せず医療専門家に相談することが大切です。
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出典
- 便秘 - ウィキペディア
- Constipation - self-care - MedlinePlus
- Fecal impaction - MedlinePlus
- Daily bowel care program - MedlinePlus
- Bowel retraining - MedlinePlus
- Abnormal Perception of Urge to Defecate: An Important Pathophysiological Mechanism in Women With Chronic Constipation - PubMed
- Clinical Impact of Rectal Hyposensitivity: A Cross-Sectional Study of 2,876 Patients With Refractory Functional Constipation - PubMed
- Biofeedback for treatment of chronic idiopathic constipation in adults - Cochrane Library
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