妊婦さんの便秘薬使用の安全性について
2025.11.12
妊娠中の便秘は多くの妊婦さんが経験する一般的な症状です。大腸への胎児の圧迫やホルモンバランスの変化により、妊娠前は便秘に悩まなかった方でも便秘になりやすくなります。さらに、貧血予防のために処方される鉄剤も便秘を悪化させる要因となります。このような状況で便秘薬を使用したいと考える妊婦さんも多いでしょうが、お腹の赤ちゃんへの影響が心配になるのは当然のことです。この記事では、妊娠中の便秘薬使用の安全性について、医学的な根拠に基づいて詳しく解説します。
妊娠中に使用できる便秘薬について
妊娠中でも安全に使用できる便秘薬がいくつか存在します。一般的に妊婦さんに処方される便秘薬は、酸化マグネシウムや膨張性下剤(バルコーゼなど)といった、胎児への影響が少ないとされる種類が中心となります。これらの薬は腸内で物理的に作用するため、体内に吸収される量が少なく、比較的安全性が高いと考えられています。
妊娠中に安全とされる便秘薬の種類
浸透圧性下剤
浸透圧性下剤は妊娠中の便秘治療において第一選択薬として推奨されています。この種類の下剤は腸内に水分を引き込むことで便を軟らかくし、排便を促します。
| 薬剤名 | 特徴 | 妊娠中の安全性 |
|---|---|---|
| 酸化マグネシウム | 塩類下剤の一種で広く使用される | 妊娠中も一般的に使用される |
| ラクツロース | 糖類下剤で腸内環境も改善 | 胎児への悪影響のエビデンスなし |
| ポリエチレングリコール | 第一選択薬の一つ | 比較的安全とされる |
浸透圧性下剤の中でも、酸化マグネシウムとラクツロースは妊娠中の便秘治療で広く使用されています。ラクツロースについては、妊娠中の使用により胎児に悪影響が生じるエビデンスは存在せず、授乳中も一般的に安全であると考えられています。
膨張性下剤
膨張性下剤は食物繊維を主成分とし、腸内で水分を吸収して便の量を増やすことで排便を促します。バルコーゼなどがこの分類に含まれ、妊娠中でも安全に使用できるとされています。
- 便を内部から膨張させて腸の蠕動運動を刺激する
- 食物繊維と同様の作用機序で自然に近い
- 体内への吸収がほとんどない
- 妊婦さんに処方される一般的な便秘薬の一つ
膨張性下剤は効果が穏やかで、自然な排便リズムを取り戻すのに役立ちます。ただし、効果が現れるまでに数日かかることがあるため、継続的な使用が必要となります。
便軟化剤(浸潤性下剤)
便軟化剤は界面活性剤の作用により便を軟らかくする薬です。医学的な研究では、便軟化剤が妊娠中の便秘治療の選択肢として考慮されるとされています。
便軟化剤の特徴として以下が挙げられます。
- 便の表面張力を下げて水分の浸透を促進する
- 穏やかな作用で腹痛を起こしにくい
- 短期的な使用において安全性が確認されている
海外の医療機関では、便軟化剤の妊娠中の使用について専門的な情報が提供されており、医師の指導のもとで適切に使用することが推奨されています。
妊娠中に避けるべき便秘薬
刺激性下剤の使用に関する注意点
刺激性下剤は腸壁を直接刺激して蠕動運動を促進する薬ですが、妊娠中は使用を避けるべきとされています。その理由は、強い刺激が子宮収縮を引き起こし、流産のリスクを高める可能性があるためです。
妊娠中に避けるべき刺激性下剤には以下のようなものがあります。
- アントラキノン系下剤(センナ、大黄など)
- ジフェノール誘導体
- 小腸刺激性下剤(ひまし油など)
これらの薬剤は妊娠していない時期であれば効果的な便秘薬ですが、妊娠中は子宮収縮のリスクがあるため、医師の指示なしに使用してはいけません。
その他の禁忌薬
エロビキシバットなど、一部の便秘薬は妊婦への使用が明確に禁忌とされています。市販の便秘薬の中にも妊娠中は使用できないものがありますので、購入前に必ず薬剤師に相談することが重要です。
妊娠中の薬の使用については、市販薬であっても必ず医師や薬剤師に確認してから使用するようにしましょう。
妊娠時期別の便秘薬使用の注意点
妊娠の時期によって便秘の原因や適切な対処法が異なります。各時期の特徴と推奨される対策を理解することで、安全で効果的な便秘管理が可能になります。
| 妊娠時期 | 主な便秘の原因 | 推奨される対策 | 特に注意すべき点 |
|---|---|---|---|
| 妊娠初期(1〜4ヶ月) | ホルモンバランスの変化 | 生活習慣改善を優先 | 器官形成期のため薬剤使用は慎重に |
| 妊娠中期(5〜7ヶ月) | 胎児による腸の圧迫 | 浸透圧性下剤の使用可能 | 比較的安定期で薬剤使用しやすい |
| 妊娠後期(8ヶ月以降) | 腸の圧迫と鉄剤の影響 | 便秘を我慢せず早めに対処 | 強い腹圧を避ける |
妊娠時期に応じた適切な便秘対策を行うことで、母体と胎児の両方の健康を守ることができます。
妊娠初期(妊娠1〜4ヶ月)
妊娠初期は胎児の器官形成が行われる重要な時期です。この時期の薬剤使用は特に慎重を要します。プロゲステロンというホルモンの分泌が増加し、体内に水分を蓄積しようとするため、排便に十分な水分が補給されなくなり便秘が起こりやすくなります。
妊娠初期の便秘対策としては、まず生活習慣の改善を優先することが推奨されます。
- 食物繊維を多く含む食品を積極的に摂取する
- 十分な水分補給を心がける
- 適度な運動を継続する
- 排便のリズムを整える
これらの非薬物療法でも改善しない場合は、医師に相談して安全な便秘薬の処方を受けることを検討しましょう。
妊娠中期(妊娠5〜7ヶ月)
妊娠中期になると胎児が成長し、大腸への物理的な圧迫が便秘の主な原因となります。この時期は比較的安定しているため、医師の指導のもとで便秘薬を使用しやすい時期といえます。
酸化マグネシウムやラクツロースなどの浸透圧性下剤が一般的に処方されます。これらの薬は効果が穏やかで、継続的な使用にも適しています。
妊娠後期(妊娠8ヶ月以降)
妊娠後期は胎児が最も大きくなる時期で、腸への圧迫も最大となります。貧血予防のための鉄剤服用により、さらに便秘が悪化しやすい時期でもあります。
妊娠後期においても、浸透圧性下剤や膨張性下剤が安全に使用できます。ただし、強い腹圧をかけることは避けるべきですので、便秘を我慢せずに早めに対処することが大切です。
出産が近づくと下痢が起こることもありますが、これは子宮収縮と関連している可能性があるため、出産の兆候の一つとして医師に報告しましょう。
便秘薬を使用する際の重要な注意事項
医師への相談が必須な理由
妊娠中は胎児への影響を考慮する必要があるため、どんな薬でも使用前に必ず医師に相談することが重要です。医学研究においても、妊娠中の市販薬の安全性と有効性に関する高品質な研究は限られており、まず非薬物療法を検討することが推奨されています。
医師に相談することで以下のメリットがあります。
- 妊娠週数に応じた適切な薬の選択
- 個人の健康状態に合わせた用量調整
- 他の薬との相互作用の確認
- 胎児への影響に関する最新情報の提供
自己判断での薬の使用は避け、必ず専門家の指導を受けるようにしましょう。
同一下剤の長期連用を避ける
便秘薬は基本的に対症療法であり、根本的な原因を解決するものではありません。同じ便秘薬を長期間使い続けると、効果が低下したり習慣性が生じたりする可能性があります。
便秘薬を使用する際は以下の点に注意しましょう。
- 必要最小限の量と期間にとどめる
- 効果が感じられなくなったら医師に相談する
- 定期的に薬の種類を見直す機会を持つ
妊娠中の便秘は一時的なものであることが多いため、出産後は自然に改善することも期待できます。
腹痛や異常な症状がある場合
診断がつかない腹痛がある場合や、腸閉塞が疑われる場合は、便秘薬を使用してはいけません。以下のような症状がある場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。
- 激しい腹痛を伴う便秘
- 吐き気や嘔吐を伴う症状
- 腹部の異常な膨満感
- 発熱を伴う場合
- 血便が見られる場合
これらの症状は、単なる便秘ではなく、より深刻な疾患の可能性があるため、早急に医師の診察を受けることが重要です。
薬以外の便秘対策方法
食事による改善
妊娠中の便秘対策として、まず食事内容を見直すことが推奨されます。食物繊維を豊富に含む食品を積極的に摂取することで、自然な排便を促すことができます。
便秘解消に効果的な食品には以下のようなものがあります。
- 野菜類:ごぼう、さつまいも、ほうれん草、ブロッコリー
- 果物類:りんご、バナナ、プルーン、キウイフルーツ
- 穀物類:玄米、全粒粉パン、オートミール
- 豆類:納豆、大豆、ひよこ豆
食物繊維には水溶性と不溶性の2種類があり、両方をバランスよく摂取することが理想的です。また、食物繊維を摂取する際は十分な水分も一緒に摂ることが重要です。
水分補給の重要性
妊娠中は体が水分を蓄えようとするため、腸内の水分が不足しがちになります。1日に1.5〜2リットルを目安に、こまめに水分を補給するよう心がけましょう。
水分補給のポイントは以下の通りです。
- 起床時にコップ1杯の水を飲む習慣をつける
- 食事の際にもしっかり水分を摂る
- カフェインを含む飲料は適度にとどめる
- 冷たすぎる飲み物は腸を刺激するので常温や温かい飲み物を選ぶ
適切な水分補給により、便が軟らかくなり排便がスムーズになります。
適度な運動
妊娠中でも医師から運動制限がない場合は、適度な運動を続けることが便秘予防に効果的です。運動により腸の蠕動運動が活発になり、自然な排便リズムが整いやすくなります。
妊婦さんにおすすめの運動は以下の通りです。
- ウォーキング:1日20〜30分程度
- マタニティヨガ:腸を刺激するポーズを含む
- ストレッチ:腹部を圧迫しない範囲で
- 水泳やアクアビクス:体への負担が少ない
運動を始める前には必ず医師に相談し、体調に合わせて無理のない範囲で行うことが大切です。
排便習慣の確立
規則正しい排便習慣を身につけることも便秘予防に有効です。毎日同じ時間にトイレに行く習慣をつけることで、体が排便のリズムを覚えやすくなります。
排便習慣を整えるためのポイントは以下の通りです。
- 朝食後など、決まった時間にトイレタイムを設ける
- 便意を感じたら我慢せずにすぐトイレに行く
- トイレでは急がず、リラックスした状態で過ごす
- 強くいきむことは避け、自然な排便を心がける
妊娠中は特に、強くいきむことで腹圧がかかりすぎないよう注意が必要です。
プロバイオティクスと便秘改善
プロバイオティクスの効果
プロバイオティクスは腸内環境を改善し、便秘の解消に役立つとされています。医学研究においても、プロバイオティクスは便秘に対して安全で効果的な治療法の一つとして認められています。
プロバイオティクスには以下のような効果が期待できます。
- 腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を整える
- 腸の蠕動運動を活発にする
- 便の水分量を適切に保つ
- 免疫機能の向上にも寄与する
妊娠中のプロバイオティクス摂取
プロバイオティクスは妊娠中でも安全に摂取できる便秘対策の一つです。ヨーグルト、納豆、キムチなどの発酵食品から自然に摂取することもできますし、サプリメントとして摂取することも可能です。
プロバイオティクスを摂取する際の注意点は以下の通りです。
- 医師に相談してから始める
- 毎日継続的に摂取する
- 食品から摂取する場合は新鮮なものを選ぶ
- サプリメントの場合は品質の良いものを選択する
プロバイオティクスは即効性があるわけではありませんが、継続的に摂取することで腸内環境が改善され、便秘が起こりにくい体質になることが期待できます。
便秘薬使用のリスクとベネフィット
適切に使用した場合のベネフィット
妊娠中の便秘を放置すると、痔や裂肛などの肛門疾患を引き起こしたり、腹部の不快感により食欲が低下したりする可能性があります。適切な便秘薬を医師の指導のもとで使用することで、これらのリスクを避けることができます。
便秘薬を適切に使用することで得られるベネフィットは以下の通りです。
- 便秘による腹部不快感の軽減
- 痔や裂肛などの合併症の予防
- 食欲の維持と栄養状態の改善
- 生活の質(QOL)の向上
- 精神的ストレスの軽減
妊娠中の快適な生活を維持するためには、必要に応じて便秘薬を使用することも重要な選択肢となります。
不適切な使用によるリスク
一方で、便秘薬を不適切に使用すると、様々なリスクが生じる可能性があります。特に妊娠中は胎児への影響も考慮する必要があるため、より慎重な判断が求められます。
不適切な便秘薬使用によるリスクには以下のようなものがあります。
- 刺激性下剤による子宮収縮と流産のリスク
- 過度の使用による下痢と脱水
- 電解質バランスの乱れ
- 薬剤への依存性の形成
- 腎機能への負担(特に塩類下剤の過剰摂取)
これらのリスクを避けるためにも、必ず医師や薬剤師の指導を受けて、適切な便秘薬を適切な用量で使用することが重要です。
個人差と医師との相談の重要性
便秘薬の効果や副作用には個人差があります。また、妊娠の経過や母体の健康状態によっても、使用できる薬や適切な用量が異なります。
医師との相談が重要な理由は以下の通りです。
- 個人の健康状態に合わせた薬の選択ができる
- 妊娠週数に応じた適切なアドバイスが受けられる
- 効果が不十分な場合に別の選択肢を提案してもらえる
- 副作用が出た場合に迅速に対応できる
- 定期的な健診で便秘の状況を評価できる
便秘が続いている場合や、便秘薬を使用しても改善しない場合は、遠慮せずに医師に相談しましょう。
まとめ
妊娠中の便秘薬使用は、適切な種類を選び、医師の指導のもとで使用すれば安全に行うことができます。浸透圧性下剤や膨張性下剤は比較的安全とされていますが、刺激性下剤は子宮収縮のリスクがあるため避けるべきです。便秘薬だけに頼るのではなく、食事や運動などの生活習慣の改善も併せて行うことで、より効果的に便秘を解消することができます。妊娠中の体の変化は個人差が大きいため、自己判断で薬を使用せず、必ず医師や薬剤師に相談してから使用することが大切です。快適なマタニティライフを送るために、適切な便秘対策を心がけましょう。
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