高齢者の下痢が続く原因と対策は?
2025.11.05
高齢になると下痢が長く続いてしまい、改善されず悩んでいる方も多いかもしれません。加齢に伴う体の変化や、服用している薬の影響など、若い世代とは異なる原因で下痢が起こることがあります。このコラムでは、高齢者に見られる下痢の原因と、その対策方法について詳しく解説します。
高齢者の下痢が続く主な原因
高齢者における下痢は、複数の原因が絡み合っていることが一般的です。特に以下のような原因が報告されています。
ウイルスおよび細菌感染による下痢
高齢者は免疫機能の低下により、ウイルスや細菌感染に対する抵抗力が弱まります。一般的に成人ではノロウイルスが設定した下痢の原因となることが多いですが、高齢者の場合、より重症化しやすく、回復に時間がかかることがあります。また、腸管出血性大腸菌や、サルモネラ菌などの細菌感染も下痢の原因となり得ます。これらの感染による下痢は、他の健康上の問題を引き起こすリスクが高いため、症状が続く場合は医療機関への相談が重要です。
薬物による下痢(特に抗生物質)
高齢者は複数の基礎疾患を抱えていることが多く、複数の薬剤を同時に服用する傾向があります。特に抗生物質は、腸内の有益な細菌のバランスを乱し、下痢を引き起こすことがあります。医学研究によると、高齢者における抗生物質関連下痢は入院患者に特に多く見られる合併症です。このほか、便秘薬の過剰使用、栄養補助食品に含まれる人工甘味料、一部の血圧低下薬も下痢を招く可能性があります。抗生物質の使用中止後も症状が継続することがあり、医療専門家への相談が必要です。特に抗生物質による下痢は高齢者で頻繁に発生し、症状が数週間継続することもあります。処方されている薬が下痢の原因である可能性がある場合、医療機関の医師に相談することをお勧めします。
消化器官の加齢による機能低下
加齢に伴い、胃や腸の機能が低下します。特に小腸の栄養吸収能力や、消化酵素の分泌量が減少することで、食べ物の消化・吸収が悪くなり、下痢につながることがあります。また、腸の蠕動運動(食べ物を送り出す運動)の低下により、便の通過速度が異なり、下痢症状を呈することもあります。
食物不耐症と栄養吸収の低下
高齢者では、乳製品に含まれる乳糖(ラクトース)の消化が難しくなることがあります。これを乳糖不耐症といい、牛乳やチーズなどを摂取すると下痢になる傾向があります。このほか、脂肪分の多い食事も消化しきれず、下痢を招くことがあります。医学的研究では、高齢者における食物不耐症は比較的一般的な問題として報告されており、個人の症状に応じた食事管理が重要です。
炎症性腸疾患と潰瘍性大腸炎
高齢者であっても潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患を発症することがあります。これらの疾患では、長期にわたる下痢が特徴的な症状として現れます。
高齢者の下痢による合併症と脱水症状
高齢者の下痢が続く場合、最も懸念されるのは脱水症状です。若い世代と比較して、高齢者は脱水症状が急速に進行し、多臓器障害やショック状態に至る可能性があります。
脱水症状の主な兆候
- めまいやふらつき
- 口渇感の強い感覚
- 皮膚の乾燥
- 尿量の減少
| 脱水症状のレベル | 主な症状 | 対応方法 |
|---|---|---|
| 軽度脱水 | 口が乾く、尿量が少ない | 経口補水液の摂取 |
| 中等度脱水 | めまい、疲労感の増加 | 医療機関への相談 |
| 重度脱水 | 意識混濁、意識喪失の危険 | 即座の医療対応が必要 |
脱水症状の兆候を感じたら、迷わず医療機関に相談することが重要です。特に高齢者の場合、初期段階での対応が後々の重篤な合併症を予防することにつながります。
高齢者の下痢への基本的な対処法
水分と電解質の補給が最優先
下痢による脱水を防ぐため、最も重要な対処方法は水分の補給です。医学的推奨では、経口補水液が小腸での水分吸収に最も効果的とされています。経口補水液には、適切なバランスで糖分と電解質(ナトリウムやカリウム)が含まれており、単なる水よりも効率的に水分を吸収できます。
効果的な水分補給方法
- 経口補水液を、少量ずつこまめに摂取する(1回100ml程度、30分ごと)
- スポーツドリンクも有用な補給手段
- 冷たい飲み物よりも、常温の飲み物を選ぶ
- カフェインを含む飲料は避ける
食事の工夫
下痢が続いている間は、消化の良い食べ物を優先的に選ぶ必要があります。白粥、うどん、スープなどの温かく柔らかい食べ物が推奨されます。一方、脂肪分の多い食事や辛い食べ物、乳製品は刺激になるため避けるべきです。症状が改善してきたら、徐々に食事を通常に戻していくことが大切です。
症状が続く場合は医療機関への相談を
高齢者の下痢が1週間以上続く場合、必ず医療機関に相談してください。特に以下の症状が見られた場合は、緊急の対応が必要です。
- 脱水症状(めまい、口渇感)
- 発熱を伴う下痢
- 血便を伴う下痢
- 腹部の激しい痛み
医療機関での診断では、血液検査や便検査によって下痢の原因を特定することができます。原因に応じた治療法が異なるため、正確な診断が重要です。
高齢者の下痢予防のための生活習慣改善
衛生管理と感染予防
特に集団生活環境にいる場合、ウイルスや細菌感染による下痢を防ぐため、以下の対策が重要です。
- 定期的かつ丁寧な手洗い(特に食事前)
- トイレ使用後の手洗い
- 食べ物の取り扱いに注意(期限確認、加熱調理)
腸内環境の改善
乳酸菌を含む食品(ヨーグルトやキムチ)の摂取が、腸内環境の改善に役立つ可能性があります。ただし、高齢者におけるプロバイオティクスの効果は、若い世代ほど顕著ではないという研究結果もあります。食品の選択については、個人の体調に応じて調整することが大切です。
定期的な運動と生活リズム
適度な身体活動は、腸の蠕動運動を促進し、消化機能を改善するのに役立ちます。散歩などの軽い運動が、腸の機能向上につながることが報告されています。また、毎日同じ時間に排便する習慣をつけることも、腸の健康維持に重要です。
高齢者が服用している薬の見直し
下痢が続いている場合、服用している薬が原因である可能性があります。以下の点に注意してください。
- 最近開始した薬と下痢の発症時期に関連がないか確認
- 複数の薬の相互作用による下痢の可能性
- 抗生物質の使用期間と下痢の継続期間の関係
医療専門家と相談し、薬の変更や調整について検討することが重要です。
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