
綿棒で耳掃除は危険?正しい耳垢除去と耳の健康管理法
綿棒での耳掃除は外耳炎や鼓膜損傷のリスクがあります。日本耳鼻咽喉科学会が推奨する正しい耳垢管理法と、症状別受診タイミング、オンライン診療活用法を専門医が詳しく解説します。
ドクターナウ編集部
2025.09.03
「気持ちいいから」「清潔にしたいから」という理由で、綿棒や耳かきを使って毎日耳掃除をしている方は多いでしょう。しかし、実は過度な耳掃除は危険で、外耳炎や鼓膜損傷などの深刻な問題を引き起こす可能性があります。日本耳鼻咽喉科学会では耳掃除を「医学的に不必要かつ危険な行為」と明言しています。では、耳垢は本当に除去する必要があるのでしょうか?正しい耳の健康管理法について、専門的な観点から詳しく解説します。
耳垢の重要な役割とは?

耳垢が果たす3つの保護機能
多くの方が「汚れ」だと思っている耳垢ですが、実は耳の健康を守る重要な役割を担っています。
機能 | 詳細 |
---|---|
殺菌・抗菌作用 | pH5の弱酸性環境を作り、リゾチームやIgAなどの免疫物質で細菌の繁殖を抑制 |
外耳道の保護 | 皮脂で外耳道の皮膚を保湿し、乾燥や刺激から守る |
異物侵入防止 | ほこりや小さな虫などの侵入を防ぎ、耳の奥への到達を阻止 |
耳垢は単なる老廃物ではなく、耳の健康維持に欠かせない天然のバリア機能を持っています。この保護機能を完全に除去してしまうと、かえって感染症のリスクが高まる可能性があります。
耳垢の自然排出メカニズム
人間の耳には「自浄作用」という素晴らしい機能が備わっています。外耳道の皮膚は鼓膜側から外側に向かって少しずつ移動し、あごの動きや咀嚼運動によって耳垢が自然に外に押し出される仕組みになっています。
この自然なメカニズムにより、健康な人であれば特別な掃除をしなくても耳垢は適切に排出されます。米国耳鼻咽喉科頭頸部外科学会も、健康な状態であれば耳掃除は不要と明言しています。
危険な耳掃除習慣とそのリスク
綿棒使用の4つの危険性
一見やわらかくて安全そうな綿棒ですが、実は様々なリスクを伴います。
- 耳垢の奥への押し込み
- 綿棒の使用により耳垢が奥に押し込まれ、「耳垢栓塞」を引き起こす
- 聴力低下や耳閉感の原因となる
- 外耳道の損傷
- 外耳道の皮膚は0.2mmと非常に薄く、簡単に傷つく
- 傷からの細菌感染により外耳炎を発症する可能性
- 鼓膜の損傷
- 深く挿入しすぎると鼓膜を傷つけ、聴力障害を引き起こす
- 国民生活センターの調査では、2010-2015年に178件の耳掃除事故が報告されている
- 綿体の残留
- 湿った状態で使用すると、綿棒の先端が軸から外れて耳の中に残ることがある
よくある間違った耳掃除方法
以下のような方法は絶対に避けましょう:
- 毎日の耳掃除: 皮膚を刺激し、外耳炎のリスクを高める
- 奥まで挿入: 鼓膜損傷や耳垢の押し込みを引き起こす
- 硬い器具の使用: ヘアピンや爪楊枝など、本来の用途以外の物の使用
- 他人による耳掃除: 力加減や角度の調整が困難で事故のリスクが高い
これらの危険な方法による事故は、特に0-4歳の幼児に多く発生しており、東京消防庁の調査では2018-2022年の5年間で230人が救急搬送されています。
耳垢除去は本当に必要?専門医の見解

除去が必要なケースとは
基本的に耳垢の除去は不要ですが、以下の症状がある場合は専門医での除去が推奨されます:
症状 | 対処法 |
---|---|
聴力低下 | 耳垢栓塞による可能性。耳鼻科での除去が必要 |
耳閉感・圧迫感 | 大量の耳垢蓄積が原因。専門的な除去を検討 |
かゆみ・痛み | 外耳炎の可能性。治療と合わせた耳垢除去が必要 |
耳鳴り | 耳垢による症状の場合、除去で改善する可能性 |
耳垢除去が不要な場合
以下の状況では無理な除去は避けましょう:
- 見た目に少量の耳垢がある程度
- 特に症状を感じない
- 日常生活に支障がない
- 鼓膜の観察に問題がない範囲
専門医の診断なしに自己判断で除去を行うのは危険です。気になる場合は耳鼻咽喉科を受診し、専門的な判断を求めることが重要です。
正しい耳垢管理法
家庭でできる安全なケア方法
適切な頻度と方法で行えば、家庭でも安全にケアできます:
- 頻度: 月1回程度(個人差あり)
- 時間: 1回あたり2分以内
- 範囲: 耳の入り口から1cm程度の見える範囲のみ
- タイミング: 入浴後の耳垢がやわらかくなった時
- 綿棒を湿らせる: 少量の水で湿らせて使用
- やさしく拭き取る: 強く押し込まず、表面を軽く拭う程度
- 奥は触らない: 見えない部分には絶対に挿入しない
- 左右別々に: 同じ綿棒を両耳に使わない
乾性耳垢と湿性耳垢別の対処法
日本人の約70%は乾性耳垢、30%は湿性耳垢です。それぞれに適したケア方法があります:
- 自然排出されやすいため、基本的にケア不要
- 気になる場合は入り口付近を軽く拭き取る程度
- 耳かきの使用は避け、綿棒を推奨
- 自然排出されにくいため、定期的な専門医でのケアを推奨
- 家庭では無理に除去せず、入り口の清拭程度にとどめる
- 2-3ヶ月に1回程度の耳鼻科受診が理想的
この違いは遺伝的に決まっており、体質に合わせたケアが重要です。湿性耳垢の方は自己処理が困難なため、専門医での定期的な管理をおすすめします。
注意すべき症状と受診のタイミング

即座に受診が必要な緊急症状
以下の症状が現れた場合は、すぐに耳鼻咽喉科を受診してください:
- 激しい耳痛: 外耳炎や中耳炎の可能性
- 出血: 外耳道や鼓膜の損傷が疑われる
- 急激な聴力低下: 突発性難聴の可能性もあり、早期治療が重要
- めまい・吐き気: 内耳への影響が考えられる
- 耳鳴りの悪化: 耳垢栓塞や他の疾患の可能性
- 耳の閉塞感が続く: 1週間以上続く場合は受診を
- かゆみが止まらない: 外耳炎や湿疹の可能性
定期受診を検討すべきケース
以下に該当する方は、定期的な耳鼻科受診を検討しましょう:
対象者 | 受診頻度 | 理由 |
---|---|---|
補聴器使用者 | 3-6ヶ月に1回 | 耳垢蓄積により補聴器の効果が低下する可能性 |
湿性耳垢の方 | 2-3ヶ月に1回 | 自然排出が困難で栓塞を起こしやすい |
高齢者 | 3-4ヶ月に1回 | 自浄作用の低下により蓄積しやすい |
小児(特に乳幼児) | 症状出現時 | 外耳道が狭く、家庭での処理が困難 |
これらの方々は、症状がなくても予防的な観点から定期的なチェックを受けることが推奨されます。
オンライン診療の活用ードクターナウ

耳の不調を感じた際、まずは専門医に相談することが重要です。最近では
ドクターナウなどのオンライン診療サービスを利用して、自宅から手軽に耳鼻科の専門医に相談できるようになりました。
- 軽度の耳痛や違和感
- 耳垢管理に関する相談
- 既存治療の継続相談
- セカンドオピニオンの希望
- 365日年中無休対応:緊急時も対応可能
- プライバシー保護:自宅で診察を受けられる
- 待ち時間なし:予約制で効率的
- 全国対応:居住地を問わずアクセス可能
- 時間節約:病院への通院時間が不要
- 医師による適切な診察:問診票だけでなく医師との対話
ただし、急性症状や詳細な検査が必要な場合は、対面診療が必要となります。オンライン診療を上手に活用して、早期の専門医相談を心がけましょう。
FAQ:よく寄せられる質問
Q1. 毎日綿棒で耳掃除していますが、やめるべきですか?
はい、すぐにやめることをおすすめします。毎日の耳掃除は外耳道の皮膚を刺激し、外耳炎のリスクを高めます。耳垢には自浄作用があるため、月1回程度で十分です。どうしても気になる場合は、入り口付近を軽く拭き取る程度にとどめましょう。
Q2. 子どもの耳垢が見えて気になります。取った方がいいですか?
基本的に無理に取る必要はありません。子どもの外耳道は大人より狭く、家庭での処理は危険です。見える範囲の汚れを軽く拭き取る程度で構いません。大量に蓄積して聞こえに影響がある場合は、耳鼻科を受診して専門医に除去してもらいましょう。
Q3. 耳かきと綿棒、どちらが安全ですか?
どちらも深く挿入すれば危険ですが、比較的綿棒の方が安全とされています。ただし、日本人の多くを占める乾性耳垢の場合は、適切に使用すれば耳かきも有効です。重要なのは、見える範囲のみを優しく処理することです。
Q4. 耳垢が湿っているのは病気ですか?
いいえ、病気ではありません。耳垢の性質は遺伝的に決まっており、日本人の約30%が湿性耳垢です。湿性耳垢の方は自然排出されにくいため、定期的な耳鼻科受診をおすすめします。
Q5. 耳掃除だけで耳鼻科に行くのは恥ずかしいのですが...
全く恥ずかしいことではありません。耳垢除去は耳鼻科の一般的な処置の一つです。多くの患者さんが耳掃除のために受診されています。むしろ、無理に自分で処理して問題を起こすより、専門医に任せる方が安全で確実です。
Q6. オンライン診療で耳の相談はできますか?
はい、可能です。
ドクターナウなどのオンライン診療サービスでは、耳鼻科の専門医に相談できます。ただし、実際の耳垢除去や詳細な検査が必要な場合は、対面診療が必要となります。まずはオンラインで相談し、必要に応じて紹介状をもらうという流れも可能です。
参考文献
- ドクターナウは特定の薬品の推薦および勧誘を目的としてコンテンツを制作していません。ドクターナウ会員の健康な生活をサポートすることを主な目的としています。 * コンテンツの内容は、ドクターナウ内の医師および看護師の医学的知識を参考にしています。
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