慢性下痢が栄養吸収に与える影響
2025.11.19
慢性的な下痢が続くと、食事から十分な栄養を摂っているつもりでも、体がうまく吸収できていないかもしれません。下痢による栄養不足は、疲労感や体重減少だけでなく、免疫力の低下や貧血など、さまざまな健康問題を引き起こす可能性があります。この記事では、慢性下痢が栄養吸収にどのような影響を与えるのか、どのような栄養素が不足しやすいのかを詳しく解説します。
慢性下痢による栄養吸収への影響
慢性下痢は腸からの栄養吸収を著しく低下させます。通常、食べ物は小腸で消化され、ビタミン、ミネラル、タンパク質、脂肪、炭水化物などの栄養素が吸収されます。慢性下痢では、腸の粘膜が損傷していたり、炎症を起こしていたりするため、栄養素を十分に吸収する前に腸内容物が急速に通過してしまうことが一般的です。
慢性下痢の定義と原因
慢性下痢とは
慢性下痢は発症から4週間以上続く下痢症状を指します。急性下痢が2週間以内で治まるのに対し、慢性下痢は長期にわたって持続し、栄養状態に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
主な原因疾患
慢性下痢を引き起こす疾患には以下のようなものがあります。
| 疾患カテゴリー | 代表的な疾患 | 栄養吸収への影響 |
|---|---|---|
| 炎症性腸疾患 | クローン病、潰瘍性大腸炎 | 腸粘膜の炎症により栄養吸収が著しく低下 |
| 吸収不良症候群 | セリアック病、乳糖不耐症 | 特定の栄養素の吸収障害 |
| 消化器系疾患 | 慢性膵炎、短腸症候群 | 消化酵素不足や吸収面積の減少 |
| 内分泌疾患 | 甲状腺機能亢進症、糖尿病 | 腸の運動機能異常による吸収時間の短縮 |
これらの疾患では、腸管の構造的・機能的な障害により、食事から摂取した栄養素を十分に吸収できない状態が続きます。
不足しやすい栄養素とその影響
ビタミン・ミネラルの欠乏
慢性下痢では、脂溶性ビタミンや水溶性ビタミン、ミネラルの吸収が障害されます。
特に不足しやすいビタミン・ミネラル
- 鉄分: 貧血の原因となり、疲労感や息切れを引き起こします
- ビタミンB12: 神経機能の低下や悪性貧血につながることがあります
- 葉酸: 造血機能に必要で、不足すると貧血のリスクが高まります
- ビタミンD: 骨の健康維持に不可欠で、欠乏すると骨粗しょう症のリスクが増加します
セリアック病などの吸収不良症候群では、小腸の絨毛が損傷することで、これらの栄養素を吸収する能力が大きく低下することが報告されています。
タンパク質の吸収障害
慢性下痢により腸粘膜が損傷すると、タンパク質の消化・吸収も障害されます。タンパク質は筋肉の維持、免疫機能、酵素やホルモンの生成に必要な栄養素です。
タンパク質不足による主な影響は以下の通りです。
- 筋肉量の減少と体重低下
- 免疫機能の低下による感染症リスクの増加
- 傷の治癒が遅くなる
- むくみや倦怠感
クローン病患者の約80%に下痢症状が見られ、体重減少も高頻度で報告されており、これはタンパク質を含む栄養素の吸収不良が関係していると考えられています。
脂肪と脂溶性ビタミンの吸収不良
慢性膵炎や小腸の疾患では、脂肪の消化・吸収が特に障害されます。脂肪が吸収されないと、脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)の吸収も同時に低下します。
| 脂溶性ビタミン | 主な役割 | 欠乏による症状 |
|---|---|---|
| ビタミンA | 視力の維持、免疫機能 | 夜盲症、皮膚の乾燥 |
| ビタミンD | カルシウム吸収、骨の健康 | 骨軟化症、骨粗しょう症 |
| ビタミンE | 抗酸化作用 | 神経障害、筋力低下 |
| ビタミンK | 血液凝固 | 出血傾向、あざができやすい |
脂肪吸収不良の症状として、便が脂っぽく、悪臭を伴い、水に浮くことが特徴的です。
電解質バランスへの影響
水分と電解質の喪失
慢性下痢では、便とともに大量の水分と電解質が失われます。下痢による電解質喪失は、水分の喪失以上に深刻な場合があり、低張性脱水と呼ばれる状態を引き起こすことがあります。
主な電解質異常
慢性下痢で失われやすい電解質と、その影響は以下の通りです。
- ナトリウム: 筋力低下、めまい、意識障害
- カリウム: 不整脈、筋肉のけいれん、脱力感
- マグネシウム: 筋肉の震え、不整脈
- カルシウム: 骨の弱化、筋肉のけいれん
電解質バランスの乱れは、初期段階では口渇感やめまいとして現れますが、進行すると全身脱力感、精神錯乱、循環不全、腎機能不全などの重篤な状態につながる可能性があります。
長期的な健康への影響
栄養失調と合併症
慢性下痢による吸収不良が長期間続くと、栄養失調状態に陥り、さまざまな合併症のリスクが高まります。
栄養失調により以下のような健康問題が生じる可能性があります。
- 心不全や循環器系の問題
- 慢性肺疾患の悪化
- 免疫機能の低下による感染症の増加
- リウマチなどの炎症性疾患の悪化
- 悪性腫瘍のリスク増加
炎症性腸疾患では、腸の炎症が栄養吸収障害をさらに悪化させ、栄養不足が炎症を増悪させるという悪循環が生じることがあります。
体重減少と筋力低下
慢性的な栄養吸収不良により、体重減少と筋肉量の減少が進行します。これにより日常生活動作が困難になり、生活の質が著しく低下する可能性があります。特に高齢者では、筋力低下により転倒や骨折のリスクが高まります。
免疫機能への影響
栄養不足、特にタンパク質やビタミン、ミネラルの欠乏は、免疫システムの機能を低下させます。これにより感染症にかかりやすくなり、感染症からの回復も遅くなることが一般的です。
対処法と治療アプローチ
医療機関での評価
慢性下痢が続く場合、まずは医療機関で原因疾患を特定することが重要です。血液検査、便検査、内視鏡検査などにより、栄養状態の評価と原因疾患の診断が行われます。
栄養補給の方法
栄養吸収不良に対しては、以下のようなアプローチが取られます。
- 経腸栄養療法: 消化しやすい形の栄養補助食品を使用し、腸を安静に保ちながら栄養を補給します
- 栄養強化食: 通常の食事に栄養価の高い食品を追加します
- サプリメント: 不足しているビタミンやミネラルを補充します
- すぐに食べられる栄養補助食品: 吸収しやすい形で栄養を摂取できる製品を利用します
クローン病などの炎症性腸疾患では、経腸栄養療法により腸の炎症を抑え、栄養状態を改善できることが知られています。
食事管理のポイント
慢性下痢がある場合の食事管理では、以下の点に注意します。
- 低脂肪・低残渣の食事で腸への負担を軽減する
- 少量ずつ頻回に食事を摂る
- 十分な水分と電解質を補給する
- 刺激物や繊維質の多い食品を控える
- 個々の症状に合わせて食品を選択する
水分・電解質の補充
慢性下痢では、水だけでなく電解質の補充も必要です。経口補水液や医療機関での輸液により、適切に水分と電解質を補給することが重要です。治療では、まずナトリウムや食塩を中心とした補液を行い、十分な排尿を確認してからカリウムを補給するという順序が一般的です。
まとめ
慢性下痢は単なる不快な症状ではなく、栄養吸収に深刻な影響を与える状態です。ビタミン、ミネラル、タンパク質、脂肪などの栄養素が適切に吸収されないことで、貧血、骨の弱化、免疫機能の低下、筋力低下などの健康問題が生じる可能性があります。4週間以上下痢が続く場合は、必ず医療機関を受診し、原因疾患の特定と適切な栄養管理を受けることをおすすめします。早期の対応により、栄養状態の悪化を防ぎ、健康を維持することができます。
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