男性の慢性便秘治療のポイント

男性で慢性的な便秘に悩んでいる方は意外と多く、特に高齢者やデスクワーク中心の生活を送っている方に多く見られます。便秘は単なる不快な症状にとどまらず、生活の質を大きく低下させることもあります。この記事では、男性の慢性便秘の特徴と効果的な治療のポイントを詳しく解説します。

慢性便秘とは、週に3回未満の排便、または便が硬く乾燥していて排出が困難な状態が続くことを指します。一般的に女性のほうが便秘になりやすいと言われていますが、男性でも高齢になるにつれて便秘の発生率が高くなります。日本の2019年の調査では、男性の便秘有訴者率は25.4%で、65歳以上では64.1%に達しています。

男性の便秘は、運動不足、食物繊維や水分の摂取不足、排便習慣の乱れなどが主な原因となります。また、前立腺肥大症などの男性特有の疾患が間接的に影響することもあります。

治療の最初のステップは、生活習慣と食事の見直しです。運動不足は腸の働きを低下させるため、1日20-30分程度のウォーキングや軽い腹筋運動が推奨されます。身体活動が活発な人は、活動量が少ない人と比べて便秘になりにくいことが研究で示されています。

食事面では、食物繊維の摂取が重要です。果物、野菜、全粒穀物、豆類などを積極的に取り入れましょう。また、1日に8-10カップ(約2-2.5リットル)の水分、特に水を飲むことが推奨されます。水分摂取量が多い人は、便秘のリスクが低下することが分かっています。

さらに、規則正しい排便習慣を確立することも大切です。毎朝同じ時間にトイレに行く習慣をつけることで、自然な排便リズムが形成されやすくなります。便意を感じたら我慢せず、すぐにトイレに行くことを心がけましょう。

これらの生活習慣の改善を2-4週間試しても症状が改善しない場合は、医療機関の受診を検討しましょう。

日本の便秘診療ガイドライン2023では、浸透圧性下剤を第一選択薬としています。酸化マグネシウムやポリエチレングリコールが効果を示さない場合は、薬剤の変更や併用が検討されます。刺激性下剤は依存性のリスクがあるため、必要な時だけ使用することが推奨されます。

下剤を1週間以上継続使用する場合は、必ず医師に相談してください。また、下剤を服用している間は、十分な水分補給を心がけることが重要です。

市販薬で改善が見られない場合や、症状が悪化する場合は、専門的な評価が必要です。医療機関では、バリウム造影検査や大腸内視鏡検査、肛門直腸機能検査などを通じて、器質的な問題や排便障害の有無を確認します。

排便障害が疑われる場合は、バイオフィードバック療法が有効なことがあります。この治療法では、骨盤底筋の適切な使い方を学び、排便時の筋肉の協調運動を改善します。

慢性便秘を放置すると、便塞栓という深刻な合併症を引き起こすことがあります。これは、硬く大きな便の塊が直腸に詰まった状態で、腹部の激しい痛み、予期しない水様性下痢、直腸出血などの症状が現れます。

また、慢性的な便秘は痔核(いぼ痔)や裂肛(切れ痔)のリスクも高めます。強くいきむことで肛門周囲の組織に負担がかかるためです。これらの合併症を防ぐためにも、早期の適切な治療が重要です。

以下のような症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。

これらの症状は、より深刻な疾患の可能性を示唆することがあります。特に50歳以上の男性で、新たに便秘症状が現れた場合や、便秘と下痢を繰り返す場合は、大腸がんなどの器質的疾患を除外するための検査が推奨されます。

男性の慢性便秘治療では、生活習慣の改善を基本として、必要に応じて適切な薬物療法を組み合わせることが効果的です。運動習慣の確立、食物繊維と水分の十分な摂取、規則正しい排便習慣の形成が治療の土台となります。

市販の下剤に頼る前に、まずはこれらの生活習慣の改善を2-4週間実践してみましょう。それでも改善が見られない場合や、警告症状がある場合は、医師に相談して適切な評価と治療を受けることが大切です。

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