
燃え尽き症候群(バーンアウト症候群)とは?症状・診断・対策を徹底解説
燃え尽き症候群(バーンアウト症候群)の症状・原因から診断方法、効果的な対策まで医学的根拠に基づいて徹底解説します。セルフチェックリスト付きで早期発見と適切な対処法がわかります。WHO認定の職業関連現象として注目される燃え尽き症候群について専門的に解説。
ドクターナウ編集部
2025.08.12
仕事に熱心に取り組んでいた人が突然やる気を失ってしまう「燃え尽き症候群(バーンアウト症候群)」は、現代社会で増加している深刻な問題です。WHO(世界保健機関)でも職業関連の現象として認定されており、適切な理解と対処が必要な状態です。この記事では、燃え尽き症候群の症状から診断方法、効果的な対策まで、医学的根拠に基づいて詳しく解説します。
燃え尽き症候群(バーンアウト症候群)とは?

Q: 燃え尽き症候群とはどのような状態ですか?
燃え尽き症候群(バーンアウト症候群)とは、それまで高いモチベーションを持って仕事や活動に取り組んでいた人が、心身の極度な疲労により燃え尽きたように意欲を失い、社会適応が困難になる状態のことです。
1974年にアメリカの精神心理学者ハーバート・フロイデンバーガーによって初めて定義されました。2019年にWHOの国際疾病分類(ICD-11)で「適切に管理されていない慢性的な職場ストレス」による現象として正式に認定されています。
Q: 燃え尽き症候群とうつ病の違いは何ですか?
比較項目 | 燃え尽き症候群 | うつ病 |
---|---|---|
発症原因 | 職場での過度なストレス | 様々な要因(遺伝、環境、心理的要因) |
症状の範囲 | 主に仕事関連 | 生活全般 |
回復の特徴 | 環境改善で比較的早期回復 | 継続的な治療が必要 |
発症パターン | 急激な意欲低下 | 徐々に症状が悪化 |
この表は燃え尽き症候群とうつ病の主な違いを示していますが、実際にはこれらの症状は重複することも多く、正確な診断には専門医による総合的な評価が必要です。
燃え尽き症候群は主に職場ストレスが原因で起こるため、職場環境の改善が症状緩和の鍵となります。一方、
うつ病はより広範囲な要因が関与するため、個人の生活全般にわたる包括的なアプローチが求められます。どちらの症状も軽視せず、早期の専門的な相談を受けることが重要です。
燃え尽き症候群は主に職場ストレスが原因で起こる一方、うつ病はより広範囲な生活領域に影響を及ぼします。ただし、燃え尽き症候群が進行するとうつ病を併発する可能性もあるため、早期の対処が重要です。
燃え尽き症候群の主要症状

Q: 燃え尽き症候群にはどのような症状がありますか?
燃え尽き症候群は、マスラック・バーンアウト・インベントリー(MBI)で定義される3つの主要症状があります。
1. 情緒的消耗感(Emotional Exhaustion)
症状の内容 | 具体例 |
---|---|
精神的疲労 | 仕事に対してエネルギーが湧かない |
感情の枯渇 | 他人への共感や思いやりが困難 |
慢性的疲労感 | 休息をとっても疲れが取れない |
情緒的消耗感は燃え尽き症候群の中核的な症状であり、
単なる身体的疲労とは異なる心理的な疲弊を特徴とします。これは長期間にわたって感情エネルギーを消費し続けた結果として現れ、
仕事への意欲や集中力の著しい低下を引き起こします。特に対人サービス業では、常に他者への配慮や共感を求められるため、この症状が顕著に現れる傾向があります。休息を取っても回復しない疲労感は、専門的な介入が必要なサインです。
2. 脱人格化(Depersonalization)
- 顧客や同僚に対して冷淡で機械的な対応をしてしまう
- 相手を人として見ることができなくなる
- 業務を単なる作業として捉えるようになる
脱人格化は、
他者との感情的な距離を意図的に作る防御メカニズムとして現れます。これにより一時的にはストレスから身を守ることができますが、長期的には職場での人間関係の悪化や業務の質の低下を招きます。
本来は思いやりのある人ほど、この症状に気づいたときの衝撃は大きく、罪悪感を感じることも少なくありません。しかし、これは意識的な選択ではなく、心の自己防衛反応であることを理解することが重要です。
3. 個人的達成感の低下(Reduced Personal Accomplishment)
- 自分の能力や価値を低く評価してしまう
- 仕事に対するやりがいや充実感を感じられない
- 「自分は役に立たない」という無力感に襲われる
個人的達成感の低下は、
これまで仕事から得ていた満足感や自己肯定感が失われる状態です。過去の成功体験も色褪せて見え、
将来への希望も持ちにくくなります。この症状は自己評価の歪みを生み出し、実際の能力以上に自分を低く見積もってしまう傾向があります。
客観的な評価と主観的な感覚のギャップが大きくなることで、さらなる自信喪失につながる悪循環を作り出すことがあります。周囲からの適切なフィードバックとサポートが回復には不可欠です。
これらの症状は段階的に進行することもあれば、同時に現れることもあります。軽症の段階で適切に対処することで、症状の悪化を防ぐことが可能です。
Q: 身体的な症状も現れますか?
はい、燃え尽き症候群では以下のような身体症状も現れます:
- 睡眠障害: 不眠、中途覚醒、早朝覚醒
- 食欲変化: 食欲不振または過食
- 身体的不調: 頭痛、肩こり、胃痛、めまい
- 免疫力低下: 風邪をひきやすくなる
- 集中力低下: 記憶力や判断力の減退
燃え尽き症候群の原因及び背景

Q: なぜ燃え尽き症候群になってしまうのですか?
燃え尽き症候群の原因は、個人要因と環境要因の複合的な相互作用によって発生します。
個人要因
要因カテゴリー | 具体的特徴 |
---|---|
性格特性 | 完璧主義、責任感が強い、自己犠牲的 |
年齢・経験 | 若年層、経験が浅い |
対処スキル | ストレス管理が苦手、相談することが困難 |
価値観 | 仕事に高い理想を持っている |
個人要因の中でも特に
完璧主義的な性格は燃え尽き症候群の大きなリスク要因となります。このような方は常に100%の成果を求め、
小さな失敗も許容できない傾向があります。また、
自己犠牲的な行動パターンを持つ人は、自分のニーズを後回しにして他者優先で行動するため、知らず知らずのうちにエネルギーを消耗してしまいます。経験の浅い若年層では、理想と現実のギャップに戸惑い、適切な対処法を見つけられずに症状が悪化することがあります。
環境要因
- 過重な業務量と長時間労働
- 不明確な役割分担や責任範囲
- 上司や同僚からのサポート不足
- 職場での裁量権の欠如
- 成果主義の行き過ぎ
- ワークライフバランスの軽視
- コミュニケーション不足
- 適切な評価制度の欠如
Q: どのような職業の人がなりやすいですか?
特に対人サービス業において燃え尽き症候群の発症率が高いことが知られています:
- 医療従事者: 医師、看護師、介護士
- 教育関係者: 教師、保育士、塾講師
- 社会保障関係: ソーシャルワーカー、カウンセラー
- サービス業: 接客業、営業職、コールセンター
これらの職業は感情労働の負担が大きく、他者への共感や配慮を継続的に求められるため、情緒的消耗を起こしやすい特徴があります。
燃え尽き症候群の診断方法

Q: 自分が燃え尽き症候群かどうかセルフチェックできますか?
はい、以下のセルフチェックリストで簡易的に確認することができます。以下の項目について、「まったくない(0点)」から「いつもある(4点)」の5段階で評価してください。
セルフチェックリスト
- 仕事から帰ると疲れ果てていると感じる
- 朝起きて、また1日仕事をしなければならないと思うとうんざりする
- 1日働くことは本当にストレスフルだと感じる
- 仕事のペースについていけないと感じる
- 仕事をすることで消耗していると感じる
6. 同僚や顧客を物のように扱っていると感じる 7. 仕事に就いてから、人に対して冷たくなったと感じる 8. 顧客に何が起こっても関心がない 9. 同僚や顧客のことをあまり気にかけていない
10. 人と働くことは楽しい(逆転項目) 11. 仕事で価値のあることを成し遂げていると感じる(逆転項目) 12. 自分の仕事が世の中の役に立っていると感じる(逆転項目)
評価方法
合計点数 | 評価 | 対応 |
---|---|---|
0-15点 | 正常範囲 | 予防的なセルフケアを継続 |
16-25点 | 軽度リスク | ストレス管理の見直しを推奨 |
26-35点 | 中等度リスク | 専門家への相談を検討 |
36点以上 | 高リスク | 早急な専門的介入が必要 |
この評価結果は
あくまで目安であり、点数が低くても日常生活に支障をきたしている場合は専門家への相談が必要です。
16点以上の場合は何らかの対策を講じることが重要で、特に26点以上では職場環境の見直しや専門的なサポートを積極的に求めることをお勧めします。また、
点数の変化を定期的にチェックすることで、症状の推移を把握し、適切なタイミングで介入することが可能になります。自己判断だけに頼らず、信頼できる人や専門家と結果を共有することも大切です。
このセルフチェックは簡易的な評価方法であり、正式な診断ではありません。中等度以上のリスクが示された場合は、必ず医療機関での専門的な診断を受けることをお勧めします。
Q: 病院ではどのような診断が行われますか?
医療機関での燃え尽き症候群の診断は、以下の手順で行われます:
- 症状の詳細な聞き取り
- 職場環境や生活状況の確認
- 既往歴や家族歴の調査
- マスラック・バーンアウト・インベントリー(MBI)
- 日本版バーンアウト尺度(17項目)
- その他のストレス評価スケール
- うつ病、適応障害との区別
- 身体的疾患の除外
- 必要に応じて血液検査
- 症状の重症度判定
- 治療方針の決定
- 休養の必要性の判断
オンライン診療という選択肢
近年、燃え尽き症候群の診断や相談においてオンライン診療サービスも利用できるようになっています。「ドクターナウ」などのオンライン診療プラットフォームでは、専門医による相談を手軽に受けることができ、初期相談や継続的なフォローアップに活用されています。ただし、重篤な症状がある場合は対面での診療が推奨されます。
燃え尽き症候群の対策

Q: 燃え尽き症候群から回復するにはどうすればよいですか?
燃え尽き症候群の回復には、段階的なアプローチが効果的です。以下の対策を組み合わせて実践することが重要です。
1. 休養とストレス管理
- 十分な睡眠時間の確保(7-8時間)
- 定期的な休憩の取得
- 有給休暇の積極的活用
- 必要に応じた休職の検討
- リラクゼーション技法(深呼吸、瞑想)
- 適度な運動習慣の確立
- 趣味や娯楽活動への参加
- 自然との触れ合い
2. 環境調整
調整項目 | 具体的方法 |
---|---|
業務量調整 | タスクの優先順位づけ、業務の委譲 |
時間管理 | スケジュール見直し、残業時間の制限 |
職場環境 | デスク周りの整理、作業環境の改善 |
人間関係 | コミュニケーション改善、サポート体制構築 |
環境調整は燃え尽き症候群の回復において
最も重要な要素の一つです。
業務量の適正化では、現在の業務を洗い出し、本当に必要な作業とそうでないものを区別することから始めます。
時間管理の改善では、労働時間の上限を決め、それを厳守することが重要です。
職場環境の整備は物理的な作業空間だけでなく、心理的な安全性も含まれます。
良好な人間関係の構築は、困ったときに相談できる環境を作り、一人で問題を抱え込まないようにするために不可欠です。これらの調整は段階的に行い、無理のない範囲で実施することが成功の鍵となります。
3. 認知行動的アプローチ
- 完璧主義的思考の修正
- 現実的な目標設定
- 自己肯定感の向上
- ポジティブな側面への注目
- 小さな成功体験の積み重ね
- 新しいスキルの習得
- 社会的つながりの維持・構築
4. 専門的治療
- 抗うつ薬(SSRI、SNRI)
- 睡眠薬や抗不安薬(短期間)
- 症状に応じた対症療法
- 認知行動療法(CBT)
- マインドフルネス基盤療法
- 対人関係療法
Q: 職場復帰のタイミングはいつが適切ですか?
職場復帰は以下の基準を満たした時点で検討します:
- 基本的な日常生活が安定している
- 集中力や判断力が回復している
- 職場に対する不安が軽減している
- 医師からの復職許可が得られている
- 短時間勤務からの開始
- 業務内容の段階的増加
- 定期的な面談とフォローアップ
- 必要に応じた配置転換の検討
5. 予防策
- 定期的な自己チェック
- ワークライフバランスの維持
- ストレス解消法の習得
- 相談できる人間関係の構築
- ストレスチェックの実施
- 職場環境の改善
- 管理職への教育研修
- メンタルヘルス相談窓口の設置
職場全体での理解と協力があることで、燃え尽き症候群の予防と早期回復が促進されます。一人で抱え込まず、周囲のサポートを積極的に求めることが重要です。
FAQ
Q1: 燃え尽き症候群は甘えではないのですか?
A1: 燃え尽き症候群は甘えではありません。WHOが認定する職業関連の現象であり、医学的根拠に基づいた状態です。責任感が強く、熱心に働いてきた人こそがなりやすい症状であり、「甘え」とは正反対の特徴を持つ人に多く見られます。
Q2: 治療にはどのくらいの期間がかかりますか?
A2: 症状の重症度や個人差により異なりますが、一般的に軽度の場合は3-6ヶ月、中等度から重度の場合は6ヶ月-1年程度の治療期間が必要とされています。重要なのは焦らず、段階的に回復を目指すことです。
Q3: 燃え尽き症候群になると仕事を辞めなければならないのですか?
A3: 必ずしも退職する必要はありません。適切な治療と環境調整により、多くの人が同じ職場で働き続けることができます。ただし、職場環境が改善困難な場合は、転職も有効な選択肢の一つです。
Q4: 家族や同僚はどのようにサポートすればよいですか?
A4: 本人の気持ちに寄り添い、否定的な判断をせずに話を聞くことが大切です。「頑張れ」などの励ましの言葉は避け、休養の必要性を理解し、専門医への相談を勧めることが効果的なサポートになります。
Q5: 燃え尽き症候群の再発を防ぐにはどうすればよいですか?
A5: 定期的なセルフチェック、適切なストレス管理、ワークライフバランスの維持が重要です。また、職場での役割分担の見直しや、相談できる環境作りも再発防止に効果的です。
Q6: オンライン診療でも燃え尽き症候群の治療は受けられますか?
A6: はい、初期相談や継続的なフォローアップはオンライン診療でも可能です。ただし、重篤な症状がある場合や詳細な検査が必要な場合は、対面での診療が推奨されます。ドクターナウなどのサービスを活用して、まずは気軽に相談してみることをお勧めします。
参考文献
- World Health Organization. International Classification of Diseases 11th Revision
- 日本労働研究雑誌No.558「バーンアウト(燃え尽き症候群)─ヒューマンサービス職のストレス」
- PubMed - Psychological stress caused by work: burnout syndrome
- Cochrane Library - Organisational interventions for improving wellbeing and reducing work‐related stress
- ClinicalTrials.gov - Testing an Evidence-Based Program for Clinician Burnout
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