
ヘルペスはうつる?原因・症状・治し方・口内炎との違いまで完全ガイド
ヘルペスの原因・症状・治療法を皮膚科専門医が徹底解説。口内炎との違いや再発予防法、最新のPIT治療まで。熱の華とも呼ばれるヘルペスの全てがわかる完全ガイド
ドクターナウ編集部
2025.08.13
ヘルペスは「熱の華」「風邪の華」とも呼ばれる、非常に身近なウイルス感染症です。一度感染すると生涯にわたって体内に潜伏し、免疫力の低下などをきっかけに再発を繰り返します。正しい知識を身につけて、適切な治療と予防を行いましょう。
ヘルペスとは?

ヘルペスの基本的な特徴
ヘルペスとは、単純ヘルペスウイルス(HSV)による感染症の総称です。口唇やその周囲に水ぶくれができる「口唇ヘルペス」と、性器周辺に症状が現れる「性器ヘルペス」に大きく分けられます。
ウイルス型 | 主な感染部位 | 症状の特徴 |
---|---|---|
HSV-1型 | 口唇・顔面(上半身) | 口唇ヘルペス、ヘルペス性口内炎 |
HSV-2型 | 性器・臀部(下半身) | 性器ヘルペス |
ヘルペスウイルスには主に2つの型があり、それぞれ感染しやすい部位が異なります。HSV-1型は主に顔面や口唇に感染し、多くの人が幼少期に家族から感染します。一方、HSV-2型は主に性器周辺に感染し、性的接触によって感染することが多いです。
ただし、近年では性行為の多様化により、HSV-1が性器に感染したり、HSV-2が口唇に感染するケースも増えています。どちらの型でも、一度感染すると生涯にわたって体内に潜伏し、免疫力低下時に再発する可能性があります。
ただし近年では、オーラルセックスの一般化により、HSV-1が性器に、HSV-2が口唇に感染するケースも増加しています。
ヘルペスの感染状況
日本では成人の約60~80%がHSV-1に、約10~20%がHSV-2に感染していると推定されています。多くの場合、幼少期に家族から感染しますが、症状が現れないことがほとんどです。
一度感染したヘルペスウイルスは、現在の医学では完全に除去することができません。ウイルスは神経節に潜伏し続け、体調不良や免疫力低下時に再活性化して症状を引き起こします。
ヘルペスの主要症状と進行段階
初感染時の症状
- 多くは無症状または軽症
- 発熱(38~40℃)
- 口腔内の広範囲な水疱・潰瘍
- リンパ節の腫れ
- 摂食困難
- 症状が重症化しやすい
- 高熱と全身倦怠感
- 広範囲の皮疹
- 長期間の症状持続
再発時の症状と進行段階
段階 | 期間 | 症状 |
---|---|---|
前駆期 | 数時間~1日 | ピリピリ、チクチクした違和感、痛み |
水疱期 | 1~3日 | 小さな水ぶくれが複数出現 |
潰瘍期 | 2~4日 | 水疱が破れて潰瘍形成、最も痛みが強い |
痂皮期 | 3~7日 | かさぶた形成、痛みが軽減 |
治癒期 | 7~10日 | 完全に治癒 |
ヘルペスの再発は予測可能な段階を経て進行します。最初の前駆期では、まだ目に見える症状はありませんが、唇周辺にピリピリとした独特の違和感を感じます。この段階で治療を開始すると、その後の症状を大幅に軽減できるため、非常に重要な時期です。
水疱期に入ると、特徴的な小さな水ぶくれが現れます。この水疱には大量のウイルスが含まれているため、感染力が最も強い時期でもあります。潰瘍期は最も痛みが強く、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。
痂皮期になると痛みが和らぎ始め、治癒期には完全に元の状態に戻ります。適切な治療により、この全過程を短縮することが可能です。
再発時は初感染時よりも症状が軽く、治癒期間も短くなるのが特徴です。これは体内に抗体ができているためです。
口唇ヘルペスの特徴的症状
- 唇や口周囲の限られた範囲に水疱が出現
- 水疱は中央が凹んでいることが多い(中心臍窩)
- 軽度の痛みやかゆみ
- 発熱は通常なし(再発時)
- 8~10日程度で自然治癒
ヘルペスの原因

初感染の原因
- 接触感染: キス、頬ずりなどの直接接触
- 間接感染: タオル、食器、リップクリームなどの共用
- 飛沫感染: 咳やくしゃみによる感染
- 性的接触: オーラルセックスを含む性行為
ヘルペスウイルスは非常に感染力が強く、様々な経路で感染が起こります。最も一般的なのは家族間での接触感染で、特に親から子への感染が多く見られます。また、ウイルスは物の表面でも一定期間生存するため、感染者が使用したタオルや食器からの間接感染も重要な感染経路です。
性的接触による感染では、オーラルセックスにより口唇と性器の間でウイルス型を超えた感染が起こることがあります。咳やくしゃみによる飛沫感染もあるため、症状がある時期は他人との接触に十分注意が必要です。
再発の原因とメカニズム
ヘルペスウイルスは初感染後、三叉神経節(口唇ヘルペスの場合)や仙髄神経節(性器ヘルペスの場合)に潜伏します。以下の要因により再活性化します:
分類 | 具体的要因 |
---|---|
身体的ストレス | 発熱、風邪、疲労、睡眠不足、紫外線曝露 |
精神的ストレス | 仕事や人間関係のストレス、不安 |
免疫力低下 | 病気、薬物治療、栄養不良 |
ホルモン変化 | 月経、妊娠、更年期 |
外的刺激 | 外傷、歯科治療、化粧品かぶれ |
ヘルペスの再発要因は多岐にわたり、日常生活の様々な場面で遭遇する可能性があります。身体的ストレスの中でも、特に発熱や風邪は代表的な再発要因で、「熱の華」という呼び名の由来にもなっています。強い紫外線も免疫機能を低下させるため、海やスキーなどのレジャー後に再発することがよくあります。
精神的ストレスによる再発も非常に多く、重要な試験や仕事の締切前など、緊張状態が続く時期に症状が現れがちです。女性の場合、月経周期に伴うホルモン変化により定期的に再発する方も少なくありません。
これらの要因を理解し、できる限り避けることが再発予防の第一歩となります。完全に避けられない要因もありますが、生活習慣の改善により影響を最小限に抑えることが可能です。
ヘルペスの感染力と感染期間

最も感染力が強い時期
- 水疱期: ウイルス量が最大となる時期
- 症状出現前24時間: 症状は見えないがウイルス排出が始まる
- 潰瘍期: 破れた水疱からウイルスが露出
ヘルペスの感染力は症状の進行段階によって大きく異なります。水疱期は水ぶくれの中に大量のウイルスが存在するため、最も感染リスクが高い時期です。注意すべきは、症状が見た目に現れる前から既にウイルスの排出が始まっていることで、この時期に知らず知らずのうちに他人に感染させてしまうケースが少なくありません。
潰瘍期も水疱が破れてウイルスが直接露出しているため、非常に感染力が強い状態です。この時期は痛みも強いため、無意識に患部に触れてしまい、手を介して感染を拡大させるリスクもあります。症状が現れている間は、特に注意深い感染予防対策が必要です。
感染予防対策
- 患部に触れない、触れた場合は手洗いを徹底
- タオル、食器、化粧品の共用を避ける
- キスや性的接触を控える
- マスク着用で飛沫感染を防ぐ
- 十分な睡眠と栄養バランスの良い食事
- ストレス管理と適度な運動
- 紫外線対策(日焼け止め、帽子の着用)
- 手洗い・うがいの習慣化
ヘルペスの治療方法

抗ウイルス薬による治療
薬剤名 | 特徴 | 服用方法 |
---|---|---|
アシクロビル | 最も基本的な抗ウイルス薬 | 1日5回、5日間 |
バラシクロビル | アシクロビルの前駆体、服用回数が少ない | 1日3回、5日間 |
ファムシクロビル | 再発抑制に優れている | 1日3回、5日間 |
抗ウイルス薬は、ヘルペスウイルスの増殖を抑制することで症状の軽減と治癒期間の短縮を図る治療の中心となる薬剤です。アシクロビルは最も歴史が古く、安全性と効果が確立された基本的な治療薬で、多くの医療機関で第一選択として使用されています。
バラシクロビルはアシクロビルの前駆体で、体内でアシクロビルに変換されます。服用回数が少なくて済むため、患者さんの服薬コンプライアンスが向上し、より確実な治療効果が期待できます。ファムシクロビルは比較的新しい薬剤で、特に再発抑制療法において優れた効果を示すことが報告されています。
いずれの薬剤も、症状出現から48時間以内の早期治療開始が効果を最大化するポイントです。
- アシクロビル軟膏・クリーム
- ビダラビン軟膏
- 症状が軽い場合や内服薬との併用で使用
最新の治療法:PIT(Patient Initiated Therapy)
PITは「患者開始治療」とも呼ばれる新しい治療法です。
- 前駆症状(ピリピリ感)の段階で患者自身が治療開始
- 6時間以内の早期治療開始が重要
- 水疱形成を予防または軽減可能
- 1日2回、1日間の短期治療
症状別治療アプローチ
- 外用薬での対症療法
- 鎮痛剤による痛み管理
- 患部の清潔保持
- 内服抗ウイルス薬
- 必要に応じて点滴治療
- 二次感染予防のための抗生物質
ヘルペスの再発要因と予防方法
再発パターンの理解
- 口唇ヘルペス: 年1~2回が一般的
- 個人差が大きく、年数回~数年に1回まで様々
- 初感染後1年以内の再発率が最も高い
生活管理による予防策
- ビタミンB群、ビタミンC、亜鉛の摂取
- バランスの取れた食事
- アルコールの過度な摂取を避ける
- 十分な睡眠(7~8時間)
- 適度な運動習慣
- リラクゼーション技法の活用
- 紫外線対策(SPF15以上の日焼け止め使用)
- 乾燥対策(適切な保湿)
- 極端な温度変化を避ける
再発抑制療法
- 年6回以上の頻回再発
- 重篤な症状を繰り返す場合
- QOLに大きな影響がある場合
- バラシクロビル500mg 1日1回継続投与
- 最大1年間の治療が可能
- 定期的な医師の診察が必要
ヘルペスと口内炎の違い
多くの方が混同しやすいヘルペスと口内炎ですが、原因・症状・治療法が大きく異なります。
見た目の違い
特徴 | ヘルペス | アフタ性口内炎 |
---|---|---|
水疱の有無 | あり(特徴的) | なし |
潰瘍の形状 | 不整形、浅い | 円形~楕円形、深い |
潰瘍の色 | 赤い底面 | 白~黄色の底面、赤い縁 |
発生部位 | 唇・口周囲 | 口腔内粘膜 |
数 | 複数 | 通常1~数個 |
症状の違い
- 前駆症状(ピリピリ感)がある
- 水疱から始まり潰瘍化
- 発熱やリンパ節腫脹を伴うことがある
- 感染力が強い
- 前駆症状はほとんどない
- 最初から潰瘍として出現
- 発熱やリンパ節腫脹は通常なし
- 感染力はない
治療法の違い
- 抗ウイルス薬(アシクロビルなど)
- 早期治療が重要
- 完治は困難、症状緩和が目標
- ステロイド系抗炎症薬
- ビタミンB群補充
- 自然治癒が期待できる
出典:
単純疱疹 - Wikipediaよくある質問(FAQ)
Q1: ヘルペスは完全に治りますか?
現在の医学では、一度感染したヘルペスウイルスを完全に除去することはできません。ウイルスは神経節に潜伏し続けますが、適切な治療と生活管理により、症状をコントロールし、再発を予防することは可能です。
Q2: ヘルペスはどのくらいで治りますか?
再発性の口唇ヘルペスの場合、症状出現から治癒まで通常7~10日程度です。早期に抗ウイルス薬治療を開始することで、治癒期間を短縮できます。初感染の場合は2~3週間かかることもあります。
Q3: ヘルペスの市販薬はありますか?
口唇ヘルペスの再発治療に限り、アシクロビル軟膏などの市販薬が薬局で購入できます。ただし、初回感染や診断が不確実な場合は、必ず医師の診察を受けてください。
Q4: 妊娠中にヘルペスになったらどうすればいいですか?
妊娠中のヘルペス感染は、胎児への影響が心配されます。特に分娩時の活動性感染は新生児ヘルペスのリスクとなるため、産婦人科医と皮膚科医が連携した治療が必要です。
Q5: ヘルペスを家族にうつさないためには?
症状がある間は、患部に触れない、タオルや食器の共用を避ける、キスや頬ずりを控える、こまめな手洗いを行うことが重要です。特に乳幼児や免疫力の低下した方への感染には注意が必要です。
Q6: ストレスでヘルペスが再発するのは本当ですか?
はい、精神的・身体的ストレスはヘルペス再発の主要な要因の一つです。ストレスにより免疫機能が低下し、潜伏していたウイルスが再活性化します。日頃からのストレス管理が再発予防に重要です。
参考文献
- ドクターナウは特定の薬品の推薦および勧誘を目的としてコンテンツを制作していません。ドクターナウ会員の健康な生活をサポートすることを主な目的としています。 * コンテンツの内容は、ドクターナウ内の医師および看護師の医学的知識を参考にしています。
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