赤ちゃんの下痢と便秘の見分け方を教えて
2025.11.05
赤ちゃんのお世話は多くの親にとって不安な経験です。特に排便の様子について「これは正常?それとも異常?」と悩まれている方は多いのではないでしょうか。実は赤ちゃんの便は大人と異なり、柔らかくて頻繁なのが正常です。このため、正常な便と本当の下痢や便秘を区別するのは難しく思えるかもしれません。この記事では、医学的根拠に基づいて、赤ちゃんの下痢と便秘の見分け方を詳しく解説していきます。
赤ちゃんの正常な排便パターンを知ることが第一歩
赤ちゃんの排便について理解するには、まず「何が正常か」を知ることが大切です。赤ちゃんの便は成人とはまったく異なります。医学的なデータによると、生後間もない赤ちゃんの便は柔らかく、液状に近いのが正常です。母乳で育てられている赤ちゃんと、粉ミルクで育てられている赤ちゃんでは、便のパターンに大きな違いがあります。
| 赤ちゃんのタイプ | 生後1ヶ月 | 生後2ヶ月 | 生後3ヶ月 | 便の特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 母乳栄養児 | 1日4~6回程度 | 1日3回程度 | 1日1~2回程度 | 黄色く液状、やや酸っぱい臭い |
| 粉ミルク栄養児 | 1日2~3回程度 | 1日1~2回程度 | 1日1~2回程度 | 茶色~緑色、母乳児より硬い |
このように、母乳栄養児は粉ミルク栄養児と比べて、排便回数がはるかに多いのが正常です。また、月齢が進むに従い、排便回数は自然に減少していきます。
知っておくべき重要な事実:「異常に見える便」の多くは実は正常です
赤ちゃんのお世話で最も多い誤解は「柔らかい便=下痢」と考えることです。実際には、赤ちゃんの正常な便はすべて柔らかく、形がない状態です。特に母乳で育てられている赤ちゃんでは、便が半液状で、おむつに若干しみ込むような見た目でも、これは正常です。
同様に「何日も排便がない=便秘」と思い込む親御さんも多くいます。しかし、母乳で育てられている赤ちゃんの場合、数日間排便がなくても、その間の便が柔らかければ、これは便秘ではなく正常なパターンです。医学的に、母乳栄養児の約37%が、何日かの間隔で排便する「不規則な排便パターン」を経験します。このような場合でも、便が硬くなければ医学的治療は必要ありません。
下痢の正確な見分け方
では、赤ちゃんの正常な便と真の下痢は、どのように区別すればよいのでしょうか。医学的には、下痢は「赤ちゃんのいつもの便と比べて、急に排便回数が増え、便がさらに水分が多くなった状態」として定義されます。
下痢の診断基準
| 症状 | 説明 |
|---|---|
| 排便回数の増加 | 赤ちゃんのいつもより明らかに多くなった(例:1日7~8回以上、2~3時間ごと) |
| 便の性状変化 | より液体に近い、水っぽい便 |
| 発症期間 | 突然発症し、2週間以内に起きた変化 |
| その他の症状 | 嘔吐、発熱、活動性低下、腹部の不快感などを伴うことがある |
赤ちゃんの場合、1日に7~8回以上の排便、つまり2~3時間ごとの排便が見られ、かつ便が明らかに水っぽくなっていれば、下痢の可能性があります。
下痢に伴う重要な症状と危険な兆候
下痢自体よりも、その後の脱水症状が赤ちゃんにとって最も危険です。以下の脱水症状が見られたら、すぐに医療機関に連絡する必要があります:
- 涙が出ない、または極めて少ない
- 6時間以上おむつが濡れない
- 唇や口の中が乾いている
- 無気力で活動性が低い、または過度に機嫌が悪い
- 肌の張りが低下している(肌をつまむと、すぐに戻らない)
- 眼が落ち込んでいる、または頭のてっぺん(大泉門)がへこんでいる
- 尿の色が濃い黄色になっている
下痢を起こす一般的な原因
赤ちゃんの下痢の多くは、ウイルス感染が原因です。その他の一般的な原因としては、以下のものが挙げられます:
- ウイルス感染(ロタウイルス、ノロウイルス):最も一般的。通常1~2週間で自然に治癒
- 食物アレルギーまたは食物不耐性:特にタンパク質(母乳中、または粉ミルク中)に対する反応
- 抗生物質の使用:赤ちゃん自身が服用している場合、または授乳中の母親が服用している場合
- 食事の変化:新しい食材の導入や授乳中の母親の食事変化
- 細菌またはパラサイト感染:より稀で、通常は医療介入が必要
便秘の正確な見分け方
下痢とは異なり、便秘の診断は「便の硬さ」に焦点が当てられます。医学的には、便秘は「排便回数が減り、かつ便が硬く、出すのが困難な状態」です。
便秘の診断基準
| 症状 | 説明 |
|---|---|
| 排便頻度の低下 | 週2回以下の排便(月齢や栄養方法による個人差あり) |
| 便の性状 | 硬い、乾いた便 |
| 排便時の困難さ | 排便時に力む、痛みを伴う、または明らかに不快感がある |
| 期間 | 2週間以上この状態が続く |
重要なポイントは、
単に排便回数が少ないだけでは便秘ではないということです。排便される便が柔らかく、赤ちゃんが苦しんでいないのであれば、便秘ではありません。
「正常に見えない行動」は実は正常です
赤ちゃんが排便時に以下のような行動を示しても、通常は心配不要です:
- 力む、または顔が赤くなる:赤ちゃんの正常な排便行動
- 音を出したり、うなったりする:便を排出するための自然な努力
- 一時的に不快感を示す:短期間の違和感で、持続的な苦痛ではない場合
これらは、赤ちゃんの腸が発達過程にあることの正常な表現です。
母乳栄養児特有の排便パターン
母乳で育てられている赤ちゃんは、便秘になりにくいという利点があります。実は、母乳栄養児の約37%が、数日間排便がない時期を経験します。しかし、医学的な研究によると、このような場合でも便が柔らかければ、治療は必要ありません。むしろ、このような赤ちゃんの親御さんが「待つこと」に同意した場合、治療介入を受ける必要がない子どもは約83%に上ります。
つまり、母乳栄養児で排便間隔が長くても、便が柔らかければ、通常は自然に改善を待つだけで大丈夫ということです。このような「待機的観察」は、医学的に推奨されるアプローチです。
粉ミルク栄養児と母乳栄養児の便秘リスク
粉ミルクで育てられている赤ちゃんは、母乳栄養児と比べて便秘になるリスクが若干高い傾向にあります。しかし、この場合でも、多くの便秘は自然に改善します。粉ミルクの種類によって便の性状が異なることが知られており、便秘が問題になった場合は、医師に相談してミルクの変更を検討することも可能です。
赤ちゃんの便の見た目から得られる情報
赤ちゃんの便の色、形、臭いなどの変化は、赤ちゃんの健康状態を反映しています。正常な便の特徴と異常な兆候を理解することは、重要な健康管理スキルです。
| 便の特徴 | 通常の場合 | 異常の場合 | 対応 |
|---|---|---|---|
| 色 | 黄色(母乳児)、茶色~緑色(粉ミルク児)。粉ミルク児の緑色は正常 | 白色、明らかに赤色(トマトやスイカの食べかすではない場合) | 医師に相談 |
| 固さ | 柔らかい、液状、形がない | 硬く乾いた状態で、赤ちゃんが排便時に苦しむ | 医師に相談 |
| 回数 | 母乳児:1日1~6回、粉ミルク児:1日1~3回が一般的 | 1日7~8回以上(2~3時間ごと)の水っぽい便 | 医師に相談 |
| 異常な臭い | 独特だが、不快ではない | 明らかに異常な臭い | 医師に相談 |
医師の診察が必要な場合
以下の症状が見られた場合は、できるだけ早く医療機関に連絡してください:
下痢の場合
- 3ヶ月未満の赤ちゃんが下痢をしている
- 脱水症状の兆候がある(涙なし、6時間以上おむつが濡れない、無気力など)
- 便に血液や粘液が混じっている
- 発熱を伴っており、下痢が2~3日以上続いている
- 嘔吐が24時間以上続いている
- 赤ちゃんの行動が通常と大きく異なる(極度の無気力、泣き方が異常など)
便秘の場合
- 2ヶ月未満の赤ちゃんが便秘である
- 粉ミルク栄養児で、3日間排便がなく、かつ嘔吐または機嫌の悪さがある
- 便に血液が混じっている
- 腹部に強い痛みを示唆する行動(過度な泣き、硬直)がある
赤ちゃんの排便健康管理のコツ
赤ちゃんの排便の健康を維持するために、親御さんが実践できることがあります:
母乳栄養児の場合
- 定期的な授乳を続ける(赤ちゃんが必要とする限り)
- 排便間隔が長い場合でも、赤ちゃんが元気で便が柔らかければ、医学的治療は通常不要です
- 発熱や脱水症状がないか、常に注視する
粉ミルク栄養児の場合
- 適切なミルク調製(水分量)が重要です
- 便秘が見られた場合、ミルクの種類や調製方法について医師に相談を検討してください
- 水分不足は便秘につながるため、月齢に応じた適切な水分補給を心がける
すべての赤ちゃんに共通すること
- 赤ちゃんの「通常の」排便パターンを知ることで、異常な変化に気づきやすくなります
- 赤ちゃんの全体的な行動や活動性を観察することが、排便の問題と一般的な健康状態の区別に役立ちます
- 疑わしい場合は、遠慮なく医師に相談してください
まとめ
赤ちゃんの下痢と便秘を見分ける上で、最も重要なポイントは、「正常な赤ちゃんの便は柔らかいこと」と「排便パターンは赤ちゃんごとに異なること」を理解することです。赤ちゃんが元気で、脱水症状がなく、便が柔らかければ、たとえ排便が少なかったり頻繁だったりしても、通常は心配不要です。一方、便が硬くなった場合、脱水症状の兆候がある場合、または赤ちゃんの行動が通常と大きく異なる場合は、医師に相談することをお勧めします。赤ちゃんの排便について心配や疑問がある場合は、いつでも医療専門家の判断を求めることが、赤ちゃんの健康と親御さんの心の安定につながります。
出典
- MedlinePlus - Infant Constipation
- MedlinePlus - Infant Diarrhea
- MedlinePlus - Infant Feeding and Patterns
- PubMed - Defecation patterns in healthy infants
- PubMed - Bowel movement characteristics in breastfed vs formula-fed infants
- PubMed - Infrequent stools in exclusively breastfed infants
- PubMed - Bowel habits in healthy infants and functional GI disorders
- PubMed - Evaluation of chronic diarrhea in infants
- Cochrane Library - Probiotics for prevention of pediatric diarrhea
- Cochrane Library - Treatment of constipation in children
- Wikipedia (日本語) - 小児科学
- Wikipedia (日本語) - 下痢
- Wikipedia (日本語) - 便秘
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